『幻影の船室 -密閉された復讐-』20年目の告発は、誰にも届かない

ソコニ

第1話船長の証言


私、山田船長は20年ぶりの同窓会クルーズの責任者だ。参加者は当時の演劇部メンバー6名。皆、『追憶の雪』という幻の舞台に関わった者たちだ。


被害者の村上美樹は、SNSで全員に「20年前の真実を語る」と投稿し、この集まりを提案した。彼女は照明事故で演劇の道を諦めた元主演女優。事故の真相を握っているような口ぶりだった。


嵐で外部との通信が途絶えた翌朝、美樹が客室で死亡しているのを発見。死因は毒物。客室は施錠され、キーカードの記録では深夜1時以降、誰も出入りしていない。


不可解なのは、彼女の化粧台に置かれた一通の封筒。20年前の舞台写真と、「すべての真実を記す」と書かれた便箋。だが肝心の告発文は見当たらない。さらに、彼女のスマートフォンから送信された謎のSOS動画。映像は暗く、断片的な叫び声だけが記録されている。


私は事故当時の状況も知っている。照明落下の瞬間、美樹の相手役だった岡田が定位置を外れていた。そのため彼女が被害に遭った。この事実は、誰も語ろうとしない。

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