第27話
「ごめんね、お待たせ。」
駆け寄ってきたモモはすぐにそう言ってきた。
「う、ううん、全然待ってないよ。」
俺今ちゃんと声出てるかな…
どちらからともなく学校に背を向けて帰路に着こうとする。
一瞬だけ後ろを見ると、そこには女子に囲まれて困った様子のイ・ハニがいた。
いつも通り丁寧に対応していると見せかけて、チラチラとこちらの様子を伺っていた。
正直、この女子達がいなかったらあいつはモモのことを追いかけて、今ごろ一緒に帰る羽目になっていたかもしれない。
今回ばかりは感謝だな。
そんなことを考えていたらあいつと目が合った。
さっきまでの不安そうな目つきとはうって変わり、一気に敵を見るような鋭い視線に変わった。
これで確信した。
イ・ハニもモモのことが好きなんだ。
今までもそう感じることは多かった。
部活中もやたらモモの近くにいるし、朝の登下校の時間、さっきだって、モモが一人だと逃さんばかりに話しかけている。
しかも、イ・ハニのモモに向ける視線が、なんというか、愛おしいものを見るような優しい目つきなのだ。
他の女子に向けるものとは違う、好きな人を見る目。
この先、もしもモモがこのことに気づいたら…
そこからはテンポよく進んでいくだろう。
だって、相手はあのイ・ハニなんだから。
俺は土俵にすら立てない。
モモの鈍感性を信じて、少しでもイ・ハニよりも好きになってもらわないと勝てない。
「じゃ、じゃあ行こっか。」
そう声をかけ、二人で学校に背を向ける。
最後に一瞬後ろへと視線を向ける。
そこにはまだ俺たちを見つめるイ・ハニの姿があった。
本人は気づいているのか、その目には嫉妬が混じっているように感じた。
・
「ごめんね、部活長引いちゃって…寒かったよね。」
歩き出してすぐ、そう言ったモモ。
「全然大丈夫。部活、お疲れ。」
どうしよう、モモのこと、見たいのに見れない。
声ちゃんと出てるかな。
いつもの話し方をしようとしてるけど、どうしても緊張してぶっきらぼうになってしまう。
「それよりも、大丈夫だった?どこか痛いとことか、怪我とかしてない?」
思うように動かない首を最大限動かして、モモの方を見る。
「うん。テグァンのおかげで助かった。ありがとう。」
そう言って、俺を見上げて微笑むモモ。
急に現れた天使のような笑顔にドキッと胸が高鳴る。
「テグァンがいなかったらどうなってたかわからない。」
「い、いや、それは大袈裟だよ。」
そう返して笑い合う。
はあ、笑顔が最高に可愛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます