第25話
「じゃ、あとは二人で仲良く帰るんだよー!」
部活終わり。
そう言い残してユナは小走りで帰って行った。
ユナも一緒に帰ろう、その言葉を言う間もないほどにユナの小走りは速かった。
テグァンが待ってるから急がないと。
そう思い、急いで荷物をリュックに詰め込み、門までの道を走り出す。
「モモちゃん!」
後ろから名前を呼ばれて立ち止まる。
そこにいたのは走って追いかけてくるハニ先輩だった。
「ごめん、びっくりしたよね。あの、練習の時は本当にごめんね。」
ハニ先輩の息は上がっておらず、また練習の時と同じ申し訳なさそうな、泣きそうな顔を向けてきた。
「そんな、私は全然大丈夫です。本当にどこも怪我してません」
ハニ先輩のあの顔を見ると、私まで泣きそうになってくる。
「本当に良かった。僕あの後もすごい心配で」
「先輩大袈裟ですよ。でも、本番はちょっと手加減してくださいね。」
「いやー。モモちゃんに言われると断れないな」
なんて、自然と二人の間で笑いが起きた。
「あ、そうだ。すみません、ちょっと今急いでて。」
次の話題にいきそうになりかけた時、さすがにこれ以上待たせることはできないと、断りを入れる。
「あ、もしかして、あの門の前にいる背高い子?」
「はい、ずっと待ってもらっていて。」
「一緒に帰るの?」
私の言葉に被せ気味に聞いてくる先輩。
「は、はい…」
ハニ先輩のいつもと少し違う様子に戸惑う。
「ふーん、そっか。」
そして、聞き慣れない、いや、聞いたことないハニ先輩の低くて不機嫌そうな声が聞こえた。
私、何か怒らせてしまうようなこと言ったかな…
どうしよう、あんなに優しいハニ先輩をここまで怒らせてしまうなんて
ドクドクと心臓が速く脈打つ。
「あ、あの、ハニ先輩…」
「ごめんね、引き止めちゃって。気をつけてね。」
そう言った声はいつもの声に戻っていて、さっきのことがなかったかのように、いつもの笑顔を向けてきた。
あれ、さっきのなんだったんだろう…
私の勘違いだったのかな。
そして手を振っているハニ先輩に挨拶をしてから、小走りでテグァンの元へ向かった。
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