第23話
「よーい、スタート!!!」
一人の先輩の声で両者ともに走り出す。
ハニ先輩のグループは背が高い人が多いからなのか、それとも3年生の貫禄からなのか、威圧感が2年生とは全然違う。
2年生相手だと簡単に取れていたハチマキも、今回ばかりは手強い。
恐らく、今まで見下ろすような形で優位だったものが、今回は同じ目線だからだろう。
「モモー!頑張って耐えろー!」
「ちゃんと支えてるから!」
下からハジンとユナの声が聞こえてくる。
「もうちょっと、、」
もう少しで相手のハチマキに自分の手が届きそうになる。
あとちょっとで届くのに、、
「わっ!」
掴もうと上体をグイッと前に伸ばした時、それに気づいた相手が取られるまいと上体を後ろへ引いた。
と同時に支えを失った私の体は前へ倒れた。
「モモ!」
落ちると思い目を瞑った時、下からテグァンの声が聞こえた。
あ、本当に落ちる
あれ、痛くない。
あれから5秒ほど経っただろうか。
もう地面に落ちて、今頃は身体中が痛んでいるはずなのに。
痛みどころか、地面の硬さすら感じない。
恐る恐る目を開けていく。
「はあ、よかった…」
「大丈夫か!?」
「怪我してない?」
開けた視界の先には、心配そうに覗き込む皆の顔があった。
そして、バッチリと心配そうな顔をしたテグァンと目が合い、今テグァンに抱き止められていることに気づく。
「え、あっ、ごめん!」
そう言ってテグァンの腕の中から飛び退ける。
「いや、全然。それより痛いとことかない?大丈夫?」
「う、うん。重かったよね、ありがとう。」
「はあ、よかったぁ…」
私が落ちそうになった時、ハジンとユナが素早くテグァンの手を離したのがよかったのだろう。
そのおかげで、テグァンが私を抱き止めてくれていた。
「モモちゃん、大丈夫だった?本当にごめんね」
ハニ先輩が今にも泣きそうな顔でこちらへ寄ってくる。
「は、はい。テグァンのおかげで怪我もないです。」
「はあ、よかったあ。本当にごめんね。」
本当に安心したようにハニ先輩が私の肩に両手を置いて、その上に自分のおでこを置く。
まるで私が死んでいなかったのが奇跡だというように。
少し大袈裟だけど。
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