第21話

普段なら6時に終わる部活。

今日は少し長引いて、完全に学校を出たのは6時45分くらいだった。


学校からユナの寮までの距離は短く、別れの時間はすぐにやってきた。

毎日一緒に帰っているけど、喋っていたのに急に一人になるこの時間が毎回少し寂しい。

早く帰ろうと家路を急ぐ。



「モモちゃーん!ちょっと待って!」


5分ほど歩いた時、急に後ろから名前を呼ばれてパッと後ろを振り返る。

そこにはこちらに向かって走ってくるハニ先輩の姿があった。


「ハニ先輩!どうしたんですか?」


「いや、前にモモちゃんがいたから一緒に帰ろうと思って。」


息を整えながらそう言うハニ先輩。

どうしよう。また手が触れた事とか思い出してまともに顔が見れない…


「あとさ、なんかお腹減らない?」


確かに、12時の昼ごはん以降何も食べていないから、私の空腹は限界だ。


「僕今めっちゃお腹空いててさ。よかったら、どっかコンビニで食べ物買って行こうと思って。」


そう言葉を続ける先輩。

めっちゃ食べたいけど、先輩と二人なんて恥ずかしいし…


「どう?行かない?」


「はい…」


「よし!決まり。」


なんてキラキラの笑顔でこちらを向く先輩。

あっ、まぶし、


「私、何気に韓国でコンビニ言ったこと無いかもです。」


思い返せば、外食したのも、四人で行ったトッポギ屋さんだけだし、休日は基本家に居たいし、何だかんだ初のコンビニに少しワクワクしてきた。







コンビニについて、私は辛ラーメン、ハニ先輩はチャパゲティを買った。

熱いから、なんて理由で私の分までお湯を入れてくれる先輩。

なんてジェントルマンなんだろう。

こういうところが、学園のアイドル、王子、なんて呼ばれる所以なのかな。


コンビニの外の席で、二人で座ってラーメンを食べる。

これって、よくドラマで見ていてやってみたかったやつだ。

すごい青春って感じがして羨ましかったんだよな〜。


「どうしたの、そんなにニヤニヤして。」


急に横から声を掛けられる。

パッと横を向くと、思ったよりも近くに先輩の顔があった。


「わっ、あ、すみません…」


あ、やばい、また変な声出ちゃった。

もう恥ずかしすぎて死んでしまいそう。


「なーに考えてるの?」


なんて上目遣いで話してくる先輩。

離れてください…心臓が…


なんて言えるわけもなく、先輩から目線を逸らすことしかできなかった。


「あ、その、コンビニで買い食いって、よくドラマで見たやつだなーって。」


「確かに。よくあのシーン見かけるよね。」


なんて笑顔で答えてくれる先輩。

それから何のドラマが好きか、とか、好きな芸能人は、なんて話をした私たち。


モテる人って、話を聞くのが上手いってよく聞くけど、本当にそうだなって今日分かった。

私は正直人と話すのがあまり得意じゃない。

だけど、ハニ先輩は、そんな私にも話しかけてくれるし、質問もして、話を広げてくれる。


緊張する時の方が多いけど、やっぱり、ハニ先輩といるのは居心地がいい。

たまに顔を近づけてきたりするのは大分ドキッとしちゃうけど。

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