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第20話

四人でトッポギを食べに行ってから一週間。

あの日から私、ユナ、ハジン、テグァンの四人で行動するようになった。

と言っても、結局は私とユナ、ハジンとテグァンで別れてしまうことが多かった。

でも、あの日からテグァンと目が合う回数が以前よりも増えた。

だが、いつものように逸らされるばかりで、まだ気まずい感じだった。


そしてこの日は体育大会のエントリー決めがあった。


「ユナ達は何選んだの?」


男子より一足先にエントリーが終わっていた私たちの方へハジンとテグァンがやってくる。


私とユナはそこまで体育祭に本気じゃないので、いかに楽できるか考えた結果、借り物競走と借り人競争になった。

正直、この二つの違いが何なのかがわからないけど。


「俺たちクラスリレー出ます!」


ハイテンションに言ったハジンがテグァンの肩を組んで私たちに向かってピースしてくる。

テグァンは隣で恥ずかしそうにしている。


二人とも、身長高いし、足長いから、きっと足も速いんだろうな。


「すごいね!私たちめっちゃ応援するから頑張ってね。」


そう言って二人を見ると、テグァンとバチっと目が合った。

でもその視線もいつものように逸らされる。

そして、テグァンの耳が心なしか赤く染まっていた。


もしかしてリレーに出ることに今から緊張してる、とか?

案外テグァンって照れ屋なのかも。









今日から騎馬戦の放課後練習が始まる。


この学校では全学年総当たりの競技として騎馬戦がある。

体育大会で一番盛り上がる競技だってユナが教えてくれた。


そして、この騎馬戦では基本、男子2、女子2でグループが作られるので、当たり前のようにいつもの四人でグループになる。


日本では騎馬戦なんてしたことなかったから少しワクワクしている。


「よーし、始めるぞー。」


ハジンの声と共に集まる私たち。


「よし、じゃあ俺とユナは横で足支える係ね。それからテグァンは一番デカいから担ぐ担当で、モモが一番上ね。」


そうハジンはサラッと説明したけど、え!?


「ちょっと!私が一番上?」


「そうだけど。」


何がおかしいとでも言うかのように、あっけらかんとそういったハジン。

私が一番上だったら、自然とテグァンに担がれる形になる。

そんなの、気まずい。

しかも、私そんなに体重軽くないし…


「私重いし、そ、その、」


「もうゴチャゴチャ言わない!」


痺れを切らしたユナが私の背中を押して、テグァンの背中に乗るように促す。


「テ、テグァン、その、お、重かったらごめんね。」


テグァンの背中に乗る前に、後ろから呟く。


「あ、全然大丈夫だから。」


テグァンの肩に手をつく。

服の上からは普段見えないけど、とてもガッチリしていて、固い肩。

異性に初めてちゃんと触れて、少しときめいてしまう。

しかも、ガタイの良いテグァンなら、もしもの時に受け止めてくれそう、なんて。


でもあんまり触れたら迷惑かと思い、触れる面積を最小限に収めようと、手のひらが付かないように、指を肩に置く。


「危ないから、もう少しちゃんと肩掴んで。」


私の行動に気づいてか、少し顔を横に向けたテグァンがそう言う。


「あ、うん。」


そう言われてからガシッとテグァンの肩を掴む。


「よしいくぞー、せーのっ!」


ハジンの掛け声でみんなが立ち上がる。


「うわっ、待って、めっちゃ高い!」


想像以上に高くなった視界に驚いて、テグァンの肩をギュッと掴む。

さっきまでワクワクしていたけど、前言撤回。


190cm以上上から見る景色は、当たり前だけど、普段見ている景色とはかけ離れていて、少しでも気を抜いたら落ちてしまう気がした。






あの後、体育館を何周か回った私たち。


地面に降ろされた瞬間に、どっと疲労感が押し寄せてきて、フラフラと地面に倒れ込む。

はあ、この学校の体育館が人工芝でよかった。

ひんやりとした芝生が頬にあたって気持ち良い。


「モモー、大丈夫ー?」


疲れた様子が一切無いユナが隣に寝転びながら聞いてくる。


「ちょっと飛ばしすぎだよ。落ちるかと思った。」


「俺ら優勝狙えるわ。」


そう言ってユナの隣に寝転ぶハジン。

何でこの二人は疲れてる様子が一切無いんだろう。

息も切れてないし。



「さっき、大丈夫だった?足とか痛くない?」


そんなことを考えていると、テグァンが隣に腰を下ろして聞いてきた。

私だけ寝転んでいるのもおかしいと思い、上体を起こして座り直す。


「うん、全然平気。ありがとう。」


そう言ってテグァンに微笑む。


「よ、よかった。あの、ポニーテール似合ってる。か、かわいい…」


運動するときは髪の毛が邪魔で、基本ポニーテールにしている。

目線を下に向けながらそう言ってくれたテグァン。

テ、テグァンが、かわいい、って…

まさかそんなことを言われると思ってなかったから、顔に熱が集まっていくのが自分でもわかった。


「あ、ありがとう。」

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