第19話
また気まずい空気が俺たちを包む。
「あ、あのさ、モモって、イ•ハニのこと好きなの、?」
もうこの際だから聞いてしまおう、とかなり攻めた質問をしてしまった。
モモの驚きと疑問が混ざったような表情で、しまった、と思う。
またモモを困らせてしまった。
「う、ううん。」
少し戸惑ったような声で返事が返ってきた。
本当に?
嘘じゃない?
「じゃ、じゃあ、他にす、好きな人って、いたりする、?」
これでもし好きな人がいるなんて言われたら、多分立ち直れないな。
緊張でうまく喋れない。
「う、ううん。いないよ。」
その言葉を聞いた瞬間、嬉しさで口角が上に上がっていくのが自分でもわかった。
それと同時に、まだチャンスがある、そして、一瞬だけど、付き合った俺たちを想像して、耳が熱くなる感覚がした。
やばい、どうしよう。
ただ好きな人がいないって聞いただけで、こんなにも嬉しくなるなんて。
まだ俺にもチャンスがあるんだ。
絶対にイ•ハニなんかに渡さない。
・
モモのマンションの前で四人で立ち止まる。
二人と話すモモを、後ろに立って見つめる。
いつになったら二人に向けるあの笑顔を俺にも向けてくれるんだろう。
正直、あの至近距離でモモと笑いながら話し合える二人が羨ましい。
確かに、前と比べると、今日で俺達の仲は少し縮まったように感じる。
でもああやって二人みたいに接するには遠すぎる。
あの笑顔を俺にも見せて欲しい。
俺だけに見せて欲しい。
今日やっと、ついに、夏休みに一目惚れして、もう一生会えないと思っていた相手と話せたんだ。
もう今までみたいに、ただ眺めているだけじゃ物足りない。
もっとモモに近づきたい。
好きだ、モモ。
モモにも俺を好きになって欲しい。
でも、頭の中では強気でも、実際に行動に移すとなると、やっぱり勇気が出ない。
だから、二人の後ろで控えめに手を振る。
そして、パッとモモと目が合う。
その瞬間、モモがくすっと微笑んだ。
あ、可愛い。
いつもならすぐに逸らしてしまう目線も、その時だけは逸らせなかった。
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