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第11話

放課後。


「モモー!行くよー!」


ユナが急かすようにそう言う。

それもそのはず、今日の準備当番だったことを忘れていつものようにダラダラお喋りしていたからだった。

それから急いで体操服の上着を羽織ってユナと更衣室を出る。




「あ、ごめん、水筒忘れてきた。すぐ行くから先行ってて。」


しばらく歩いたところで水筒を更衣室に忘れたことに気づく。

そう言った後、走って今まで来た道を引き返した。


更衣室に着いた後、靴を脱ぐ時間も惜しかった私は靴が地面につかないように膝立ちで自分の水筒を取りに行く。

一歩一歩歩くたびに振動が直接膝に響いて少し痛い。

案の定、更衣室を出るときに膝を見てみると少し赤くなっていた。


膝についたゴミを軽く払った後、急いで部室へ行こうとすると、


「アンニョン。」


「ア、アニョハセヨ。」


着替え終わったハニ先輩が後ろから話しかけてきた。


「あれ、今日モモちゃん準備当番じゃなかった?」


「すみません!私たちそのこと忘れてて、それで行く途中に水筒忘れちゃって、それで取りに来たんです…」


いきなり痛いところをつかれて反射的に勢いよく頭を下げて謝る。

どうしよう、絶対怒ってるよね。

先輩の顔怖くて見れなくて徐々に頭が下がってくる。


するとハニ先輩は笑いながら


「なんだ、全然大丈夫だよ。それより、僕そんなことで怒るような人だと思われてるの悲しいな〜」


そうやってずっと俯いていた私の顔を覗き込むようにして茶化してきた。


「わっ」


すごく近くなった先輩との距離を話すように一歩下がる。


「あ、あの、本当にすみません。」


「全然いいよ、そんなに固く考えないで。ほら、部長が言ってるんだし。」


そう言ってあのキラキラスマイルを向けてくる。

眩しいな…


「それに、僕も準備手伝うから。」


「え、い、いや!大丈夫です、!そんなことしていただくわけには、、」


「だから気にしないでよ、ね?」


先輩の押しに負け、今回は先輩の言葉に甘えることにした。

ユナはすごい驚いていたけど。



私と先輩でボールを数える。

男女混合なだけあってボールの数も2倍で数えるのも頭が混乱しそうだった。

私って本当に数字に弱いんだな。


「ははっ」


急に先輩が笑い出すから何事かと反射的に先輩の方を向く。

それでも先輩はまだ笑っている。


「どうしたんですか?」


「いや、モモちゃんあまりにも顔が真剣だから。ボール数えるの苦手、とか?」


え、先輩人の心も読めるの?

このニヤニヤした顔、よくユナがするやつに似てるな。


「私って数字が本当に苦手みたいです…」


「結構深刻そうだね。」


そう言ってまた笑い出す先輩。

もう、こっちは真剣なのに。


「あ、」


ボールを別のカゴに入れる時、手が滑って一つ転がっていく。


ボールに手を伸ばした瞬間、同時に先輩の手が伸びてきて、ボールを掴むように先輩の手が私の手を掴んだ。


「あ!ご、ごめん。ついもうボール掴んだ気でいちゃって…」


お互いに咄嗟に手を離して、先輩がそう言ってきた。

事故とはいえど、初めて異性に触れたことで聞こえてしまうんじゃないかというくらい心臓がドクドクと早く脈打つ。


「い、いえ…」


どうしよう、言葉が上手に出てこない。


さっき先輩が触れた部分が熱くなる。

赤くなってるのかと確認するけど、見た目は何も変わっていなかった。

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