第7話

次の日の放課後、ユナと更衣室でジャージに着替える。





昨日家に帰った後、待ってましたと言わんばかりの勢いで飛び出してきて、


「学校どうだった?友達できた?」


と食い気味に聞いてきたお父さんとお母さん。


「うん。隣の席の子と仲良くなったよ。」


「よかったーーーーー」


私がユナと友達になったことを報告すると、二人とも自分のことのように喜んでくれて、ぎゅっと強く抱きしめられた。

今ままでずっと不安な気持ちを打ち明けていたから、口では大丈夫と励ましてくれていたけど、実はどこか心配してくれていたんだと思うと胸が熱くなった。





「きゃー!モモポニーテールじゃん!可愛い!」


部活のために髪をくくっていると、横から着替え終わったユナが顔を覗かせてそう言った。


「うん。下ろしてるのも可愛いけど、ポニーテールは想像の100倍可愛いわ。ちょっとこっち向いて。」


そう言ってカメラを向けてきた。


「ちょっとやめてよ、恥ずかしい。」


とか言って、私自身、ここまで人から褒めてもらうことが初めてだから、かなり浮かれている。

ユナが可愛いと言ってくれる度になんとも言えないこそばゆい気持ちになる。


「ユナも可愛いじゃん。くくってるの。」


そう言い返すと、


「はい、写真とろ。初おそろヘアスタイル。」


そして何枚か一緒にセルカを撮る。

そういえば、友達とセルカ撮るの憧れだったな。

日本にいた時の友達は私みたいに内向的な子が多くて、自ら写真を撮ろうと言う子がいなかったし、自分から誘うのもどこか恥ずかしかった。



「よし、そろそろ行こうか。」


3時半に学校が終わったのにも関わらず、更衣室で4時までお喋りしていた私たち。


そしてタオルと水筒だけ持って部室へ向かおうと更衣室を後にした。








「ユナヤ、アンニョン。」


「アニョハセヨ。」


私たちが更衣室を出た同じタイミングで男子更衣室から出てきた一人の男の人。

その人に向かって頭を下げて挨拶するユナ。

それを見て反射的に同じように頭を下げる。

顔を上げてからその人の顔をよく見ると、すごく綺麗な顔をしていた。


聞かなくてもわかる。

この人が昨日ユナの言っていたテニス部の部長だ。


本当にテニス部なのか疑うくらいの白い透明感のある肌、見上げるくらいの長身、鼻筋の通った鼻、二重で少しつり上がり気味の目に少し高い声。

爽やかだけど、どこか天使みたいにふわふわした雰囲気。

そしてそこに混じる先輩をスター性を物語るキラキラオーラ。


すごい。こんなドラマから出てきたような人って存在するんだ。

隣の部長に呆気に取られる。


「この子が昨日言ってた転校生の子?」


そう言って私の方に近づいてきた先輩。

先輩のキラキラオーラが眩しすぎて一瞬たじろぐ。


「は、はい。田村モモです…」


「テニス部部長のイ•ハニです。これからよろしくね。あと、わからないことがあったらなんでも聞いてね。」


「はい。よろしくお願いします。」


どうしよう、緊張しすぎて先輩の顔がよく見れない。

俯き気味でもう一度ペコっと頭を下げる。


「そんなに緊張しないでよ。」


先輩に私の緊張が伝わったのか、ハハっと笑いながら優しく言葉をかけてくれる先輩。

ごめんなさい、先輩。緊張しないこと、私にはあと100年早いかもしれません…

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