第6話

放課後を知らせるチャイムがなり、みんなが帰り支度を一斉に始め、続々と教室を出ていく。


「途中までだけど、一緒に帰ろ。」


荷物をまとめるなり、すぐに私の机へ来て誘ってくれたユナ。


「ごめん、先生に職員室に呼ばれてて…」


「そっか。職員室どこかわかる?」


一瞬寂しそうな顔をしたユナだったが、コロっと表情を変えてそう聞いてくれた。

本当にどこまで優しいんだ。


「うん。大丈夫、ありがとう。」


「そっか。じゃあ明日一緒に帰ろうね。バイバーイ!」


そう言って手をブンブン振りながら教室を出て行った。


よし、私もそろそろ行くか。

教室を出て、今日一日のことを振り返りながら職員室までの道を歩く。


今日一日あっという間だったな。

まさか一日目から友達ができて、ここまで仲良くなれるなんて夢にも思っていなかった。

それもこれも全ては最初に話しかけてくれたユナに感謝だな。


クリクリした目にぷっくりした涙袋、少し顔の輪郭が丸くて、センターバングのロングの黒髪。

まるで韓国のウェブ学園ドラマの主人公のようなユナ。

それに加えて変に飾っていなくて、話が面白くて優しい。

すごい、絵に描いたような完璧人間じゃないか。

そんな子と友達になれたことの嬉しさから、ついつい頬がにやけてしまう。


廊下の窓の外の朝はあんなに憎たらしかった快晴の空も、今では私の心情を表しているようだった。

引き寄せられるように窓の外の景色を眺める。


ん?朝職員室から教室に行く時、こんな景色見たっけ?

あれ、ここの廊下通ったっけ?


その瞬間、今までハッピーだった気持ちに一気に不安な気持ちが押し寄せる。


私、また道に迷ってしまった。

はあ、完全に何も考えずにフラフラ歩いてたせいだ。

見渡す限り人もいないしどうしよう。

街で迷った時と同じように勝手に涙が出てくる。




とりあえずしばらく廊下を進んでみると、なんとなく知っているところに辿り着くことができた。


「やっと抜け出せた。」


安堵から心が暖かくなるのを感じるのと同時に、先生を待たせてしまっている焦りからで小走りで職員室まで急ぐ。





ドンっ





「わっ、、」

「おっ、」


安心しきっていた私は、周りに注意を配っていなかったため、角を曲がった瞬間に誰かとぶつかってしまった。


「す、すすすみませんっ!」


「あ、いや、別に…」


勢いよく頭を下げた私に、相手はぶっきらぼうにそう言ってすぐに立ち去ってしまった。

やっぱり怒らせちゃったよね。

しかも走ってたから余計に痛かっただろうし。


そういえば前にもこんなことがあったと、前に街で人にぶつかった時のことを思い出す。

あの時も私の完全なる注意不足だったし。

自分の不注意さに嫌気がさす。


今までの気分とは打って変わって、テンションが下がる嫌な気分に包まれながらトボトボと職員室まで向かう。

職員室までの距離はあと30メートルもなかった。

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