第3話

「モモー、今日も図書館行くの?」


学校開始まであと1週間。

図書館に行く前に昼ごはんを食べていた時、ふとお母さんがそんなことを聞いてきた。


「うん。行くけど、どうして?」


するとみるみるうちに顔を輝かせたお母さん。


「ちょうど良かった!帰りのついでにトイレットペーパー買ってきてくれない?ずっと買いに行くの忘れてたのよね。」


「そんなの無理だよ!だってまだ全然韓国語もわからないし、それに方向音痴でまだここらへんの土地勘もないし、」


「大丈夫よ!モモ最近韓国語上手くなってきてるんだから自信持って!それに今の時代、道に迷ってもスマホが助けてくれるじゃない!ほんと、便利な時代になったものよね〜。」



というわけで、帰りにお使いを任されたけど、


「ここどこ…」


早速迷子になりました。



だから私方向音痴って言ったじゃん!



Google大先生に頼ろうと思ったけど、ちゃんとGPS働いてくれないし、、


私の記憶ではここら辺にドラックストアがあったはずなんだけどな。

もうかれこれ1時間近くこのあたりを行ったり来たりしている。

そのせいか、青い快晴だった空にオレンジ色が差し掛かってきていた。


このまま家にも帰れない気がしてきて、だんだん目に涙が浮かんでくる。

流石に17歳のほぼ成人女性が外で泣くわけにもいかないので、深い瞬きを一回して耐える。


「もう本当にどうしよう。スマホだけが頼りなのになんでこういう時に限って動いてくれなっ…!」



ドンっ



「あ、す、すすすみませんっ!」


ずっとマップを眺めていたせいで前の人に気づかずぶつかってしまい、反射的に謝る。

なんの土地勘もないところで迷子になり、1時間以上彷徨った結果、人にぶつかってしまうこの状況に私はオーバーキル状態ですぐにでも泣きたい気分だった。


「…あ、大丈夫ですか。」


その声は低くて若い男性の声だった。


「あ、あの、はい、大丈夫です。すみませんでした。」


人見知りと心の余裕のなさで顔を上げることができず、ずっと俯いたまま喋べり、その場を足早に立ち去った。



あの人の声、結構上の方から聞こえてきたなあ、、

ずっと俯いてたからわからないけど、多分身長高いんだろうなあ。

韓国人男性って日本人男性よりも身長高いっていうしね。



よく考えたら私あの時韓国語話せてたじゃん!

勉強の成果が出てきたのかも、と少し自信になった。







その後なんとかドラックストアに辿り着きトイレットペーパーを無事ゲットした私は、歩きすぎて重たい足を引きずって、なんとか家まで帰った。







それから学校が始まるまでの日々はあっという間に過ぎていった。

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