愛死体

もち

愛死体

 彼を殺した。これは仕方の無い事だった。


 私は彼を愛している。そう、昔も今もこれからも。彼が例えこの世に居なくても愛している事に変わりはないのだ。じゃあ、何故彼を殺したのか。それは彼の瞳が最期に映すのは自分でなければならないから。


 一目見たときから、私は彼に惚れていた。これが所謂一目惚れと言うものなのか。それからは彼に近付く為の努力をした。けれど彼の周りにはたくさんの人がいた。私の出る幕など1つもない。それでも諦めきれなかった。彼はこんな私にでも優しく話しかけてくれるのだ。伝えたい今すぐに。あなたに惚れていると。付き合って欲しい、そう言葉にしたいのに。


 そんな自信はなく、もし伝えた所で私の心は届きはしない。それなら、せめて私を最期に見ていて欲しい。彼と一緒に居たい。私だけのものにしてしまえばいい。

だから彼を、私だけのものにした。愛していたから。私だけを見て欲しかったから。

最期に私を映した彼の濡れた瞳は、とてもとても綺麗だった。

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愛死体 もち @mochichi_002

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