第28話 良くも悪くも想定外があると言う災厄
そんな感じで、壁の、枝が広がってる高さの、私の身長より少し下ぐらいの高さ。そこに打ち込んだ、釘を曲げたような金具……というか、本当に釘を曲げてもらったんだけど……に、糸を張り巡らせて、網を作った。もちろん、部屋の真ん中の、ダークトレントの幹は避けて。
で、その上を走り回りながら、広がる枝を、端っこから切り落としていってるんだけど……ちょっと、嬉しいのと、嬉しくないのと、両方、思ってなかった事が分かった。
嬉しいのは、天井だと思ってたところを、すり抜けて糸を飛ばせたこと。これなら、枝の隙間に黒い石を飛ばして、そのまま振り下ろすみたいにすれば枝が切れる。とても楽だ。天井にぶつからないようにしようと思ったら、やっぱり大変だったから。
「う、わっ!」
嬉しくないのは、この高さまで根っこが届くって事。いや、だって、上が見えないぐらいの高さがある大部屋の、半分よりは高い場所にいるんだよ? はっきり言って、落ちたら高さだけで死んじゃうぐらいには、高い場所だよ? そこまで届くとか、流石に思ってない。
しかも、ここまで届くからか、太い根っこだから、網みたいに設置した糸だと、そのままじゃ切れない。でも、私が削ろうとすると、網に引っ掛かって大変な事になる。だから、逃げて、網が揺れるのを耐えるしかない、ん、だけど。
そこを狙って、葉っぱがものすごい勢いで飛んでくるから、そのたびに壁際まで逃げないといけないんだよね。そうやって逃げてると、せっかく切った枝がにょきにょき伸びて、元に戻っていく。
「削った枝の、太さが、戻らないのは、良かったと言えば、良かったけど……」
たぶんこれ、枝の残りとか、根っことか、網みたいに張った糸とかより、私の集中力の方が先に切れるんじゃないかなぁ……って、気が、する。今だって、大分集中できてないというか、喉乾いてきたし、お腹もすいてきた気がする。
これがゲームなら、ポーズ画面にするか、ターン性のゲームならコントローラーを置いて休憩できるんだけど、今のこれは、自分の体を動かす、ゲームみたいな現実。時間を止める魔法なんて便利なものは、無い。
だから、何とか今のまま、今できる事で、このダークトレントを倒さなきゃいけないんだけど……なんて思っていたところで、メキ、っていう音が聞こえた。
「あっ」
それは。木に皹が入る音だった。うっかりなのか、切れる太さギリギリの根っこが網に当たった時とか、落とした枝と根っこがぶつかった時とかにも散々聞こえてた、木が壊れる時の音。
でもこれは、たぶん違う。だから全力で壁際に戻って、ちゃんと安全に降りられるようにしていた場所から降りて、何故か地面(?)から持ち上がったところで動きを止めてる根っこを避けて、ダークトレントの本体、根っこと枝を繋ぐ、幹の所へ走った。
メキメキって音は、間を開けてゆっくり鳴ってた。それでも部屋が大きい分だけ移動に時間がかかって、ちょっと高さも足りなかったから、助走をつけて幹を駆け上がって、ちょっと離れた枝に糸を巻き付けて、ぶら下がる。丁度そうなった時に、バキッ、って音がして、ダークトレントの幹に、大きなひび割れが、3つ出来た。
怒ってる顔文字みたいなそのひび割れが、そこからさらに大きく開いて。
その瞬間、ぶら下がった時には右手で取り出しておいた、50枚の爆発する魔法のカードを、絵文字の口の所に、投げ込んだ。
魔法のカードは、その辺も魔法って事かは分からないんだけど、狙ったところに真っすぐ飛んでいく。そして、相手が避けない限り、いや避けても、よっぽどしっかり避けない限り、大体は当たる。外すと悲しいどころじゃないから、とても助かる。
その、ほとんど当たる、っていうのは、何枚一緒に投げても同じだ。だからその50枚の魔法のカードは、しっかりダークトレントの口の中に入って……すごい爆発を起こした。
顔文字の、目になるところのひび割れが丸くなるほど開いてるけど、私は次の魔法のカード、50枚の束を投げた。だってダークトレントは、倒せた時は悲鳴を上げる。悲鳴が無いなら、まだ倒せてない。魔法のカードを使ったのなら、しっかり倒すまで使う。ケチって倒し切れなかったら、こっちが死んじゃうんだから。
「……嘘でしょ。まだ悲鳴上げないの?」
だから。
だから、次の50枚を投げ込んで、今度はすごい勢いでダークトレントが燃え上がっても……悲鳴が上がらなかったら、更に50枚追加だ。
だって、ここで倒し切れなかったら、それこそ魔法のカードが無駄になる。それは、それだけは、ダメだし。倒せれば、まぁ、必要だったって、言えるけど。倒せずに、こっちがやられちゃったら、それは、絶対にダメだし。
でも、一応、枝に巻き付けた糸も燃えそうだから、網の上に逃げておこう。大丈夫、高さは合わせておいたから、ちょっと勢いをつければ手が届く距離にはなってる。
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