第13話 (通称)ボスモンスターという災厄

 後ろは氷の壁で塞がれた。前には魔法使い型のモンスター。それも多分、特別な部屋にいた奴が立ち塞がってる。魔法を、それも氷の魔法を使う時点で、持久戦の選択は無い。時間をかければかけるだけ、寒さで動けなくなっていくから。

 魔法使い型は、人間に近い姿をしてるだけあって、その弱点は人間と一緒だ。つまり、首か心臓。なんだけど、魔法使いって時点で、直接攻撃はあんまり効かなかったりする。だって傷をつけても、こいつの場合だと凍らせれば出血しないから。

 それに、ダンジョンの中では、魔法って言うのは色々に使える。その色々の中には、安全地帯で魔石を使って傷を治す、っていうのも入っている。だからなのか、魔法使い型のモンスターも、傷を治すっていう行動を取る。ちょっとずつ傷をつけても治してしまうし、即死技が入っても、ゲームで言う踏ん張りスキルみたいな感じで、耐えられるかもしれない。


「……」


 出来るだけ呼吸を細く、浅く、小さくして、冷たい空気をそのまま肺に入れないようにする。マフラーとかマスクがあったらもっと良かったんだけど、ウェストポーチから出して首と口を覆ってる暇はなさそう。その瞬間に、それこそあの魔法のカードみたいに凍ってしまう魔法が飛んでくる気がする。

 良かったのは、私の武器は糸で、氷の魔法使い相手だと、手に持っていられない金属で出来てないって事。その代わり、ナイフは触れなくなった。まぁ、元々戦いに使うものじゃないから、それはいい。

 魔法が飛んでくるのは、基本的にはあの杖からだ。上からも下からも飛んでくるけど、でも、杖が無くなったら魔法が使えなくなる、って事では無いだろうし。下手に杖を壊したり、弾き飛ばしたりしたら、暴走するかもしれない。杖は狙わない方が良さそう、かな。


「さて、と……」


 攻撃を避けた時点で、左手で糸の束はベルトから外して持っている。ただ糸を動かして、黒い石を重りに回して、勢いをつけるには、1秒はかかる。その間に、間違いなく魔法が飛んでくる。

 もちろん、勢いをつけてから狙うまでにも魔法が飛んでくるし、狙っている間に魔法を避けていたら、どんどん魔法が飛んでくる。で、凍ったところに足をついたら、そこから動けなくなって袋叩き……。

 っていうのを避ける為には、何とか、最初の1回か2回の攻撃で倒さないといけない、訳なんだけど。問題は、それが出来るかどうかって事で。


「……部屋の方が、広かっただろうし、高さもあっただろうし、ここよりは、戦いやすかったかな」


 とは、思うけど。今から大人しく部屋に戻ってくれる訳ではないし。既に退路は断たれてる。向こうにこっちを逃がすつもりは全く無い。だから、ここでどうにかするしかない。

 ……とりあえず、杖中心に注意しておいて。反対側の手とかからも、魔法が飛んでくるかもしれない、って、警戒はしておこう。杖は狙わない。フェイントで狙うぐらいはしてもいいけど、基本は、魔法使い本体を狙う。

 致命傷でも治されるかもしれない。通ったと思っても反撃が来るかもしれない。そう思っておいて、その上で狙えるだけ、首と心臓を狙う。私が寒さで動けなくなるまでに。


「……よし」


 とりあえず、まずは、動き出しの一撃目を避けるところから。絶対に仕掛けてくるから。わざわざ不意打ちの一発で、そのまま退路を断ってくる程度には頭が良いんだから。

 ……魔法使い系のモンスターって、魔法のカードがあんまり効かないから、一発逆転しにくいというか、万が一の時の保険が無い事になる。だから余計に、戦いたくないんだけど。

 ほんともう、モンスターハウスって厄介だし、こんな構造があるとか、殺意が高いんだよなぁ……。

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