裏切られてなんかない

@mikta

第1話 救われる場所はなく

 足が、重い。

 俺、小鳥遊湊たかなしみなとは今日は何もないように祈りながら玄関の扉を開けた。


「ただいま…」

 

 そのまま、音を立てず部屋に向かっていたが、最悪の想定が当たってしまった。


「うわ、なんでいるの変態!?こっち来ないで!!」

 

 心がギシッと軋みをあげる。


「すまない、近づいてなんかいないんだ、信じてくれ…」

 

 そういうと俺の義妹に当たる小鳥遊小雪たかなしこゆきはさらに、視線を険しくさせた。


「嘘だ、だったら何であの時私を襲おうとしたの!?せっかく優しいお兄ちゃんがうちに来たと思ったのに!」

 

 そう吐き捨てると、小雪は一目散に何処かに行ってしまった。

 

 いつから、こんなことになってしまったのだろう。

 そんな、意味のない問いが今日も繰り返される。

 

 俺は8歳のとき、事故で優しい両親を亡くし、この家に引き取られた。

 それでも、強く生きようと頑張ってきたのに、結局いつものように冤罪をかけられて新しくできた家族にも疎まれる始末だ。

 ずっと前からもうすがれる物が両親が亡くなる前に残した家族写真が入ったペンダントだけになっている。

 これがなかったらいつ自殺していたか分からなかった。

 この楽しかったときのことを思い出すだけでどんな嫌なことだって耐え忍ぶことができた。

 

 相変わらず俺以外の家族3人分の食事しか作っていない義母を横目で見ながら階段を登って自分の部屋に閉じこもった。


 明日も憂鬱だ。

 どうせまた、水をかけられたりするのだろう……

 そんなことを考えながら空腹と疲れで意識が遠のいていった。


______________________________________


 少し改稿しました。

 内容は変わっておらず、読みやすいようにしただけです。

 では、また。

 


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