Column1 「アンケート」の意味
今回は「アンケート」という言葉について取り上げようと思います。
☆
早速ですが、皆さんには次の例文を見ていただきましょう。
——好きな本に関するアンケート調査をする。
一見何ということもない普通の文章に見えるかなと思うのですが、「アンケート調査」というのは実は重言になっているんですね。
「重言」とは、私がこれまで書いてきた『NIHONGO』シリーズの中でも取り上げたものなので、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
ですが久しぶりの登場なので、おさらいをいたしましょう。
「重言」とは、「同じ意味の語を重ねていう言い方」のことです。例を挙げると、「馬から落馬する」や「後ろにバックする」などがあります。
「重言」に部類されるものの中には「誤りとされているもの」がありまして、上記に挙げた二つの例文はそれに当てはまります。というのも、どちらか片方の言い方があれば、意味が通じるからです。
「馬から落馬する」は「馬から落ちる」もしくは「落馬する」でいいですし、「後ろにバックする」は「後ろに進む」もしくは「バックする」としても文章として十分に成り立つことがお分かりになることでしょう。
これを踏まえて「アンケート調査」を見ます。
「アンケート」というのは、フランス語の「enquête(アンケート)」が語源です。
意味は「調査」。つまり「アンケート調査」とすると、「調査調査」となって意味が重なってしまうのです。
ただ、「重言」というのは扱いが難しくて、ものによっては許容されるものもあります。
この「アンケート調査」もその一つで、場合によっては使ってもよいとされています。例えば『明鏡国語辞典 第三版』の「重言」の項目には、「アンケート調査」について、次のものに分類されています。
**********
意味が明確になる、強調される、新しい意味が加わる、そもそも意味の重なりではないなど、適当な理由があって「不適切な重言」ではないもの
(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)
**********
このように、意味が重なってはいるものの「アンケート調査」は、上記のような考えができるからという理由で、「不適切な重言ではない」としているようです。
ただし、気を付けなければいけないのは「不適切な重言ではない」という言い方です。これは「適切な重言である」とイコールではありません。
要するに、辞書としては「不適切とは言い切れないけれど、適切とまではいえない」という意味が暗に潜んでいると、私は解釈します。
ですから、人々が「アンケート調査」ということに対して誤りとは思わないけれども、使う立場や、考えによっては一歩止まって考えてみてくださいね、ということであろうと思います。
突き詰めると意味が重なっているため、「アンケート」だけで使うほうがいいのでしょうけれど、音として「アンケート調査」というほうが落ち着くのかなというのもあります。
この辺りは使う人がどう考えるかによると思います。
皆さんは、「アンケート調査」と使うでしょうか。
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