Column9 「リベンジ」は「再挑戦」という意味で使えるか否か

 前回に引き続き、「リベンジ」という言葉について取り上げようと思います。


     ☆


「リベンジ」には、「雪辱」という意味として使われるだけでなく、次のような使われ方がされることもあります。


 ――行きたかったお店が前回臨時休業だったので、リベンジしたい。

 ——チーズケーキを作るのに失敗したのでリベンジしたい。


 上記の例文を見て分かる通り、この二つの「リベンジ」は「失敗したことや、上手くいかなかったことに対して再挑戦する」という意味で使われていることが分かると思います。


 ですが、前回のColumnで確認した通り、原語である「revenge」には、「復讐」「仕返し」という意味しかなく、「再挑戦」という意味はありません。「再挑戦」というも日本語の中だけで使われている意味なんですね。

 ちなみに、この意味は1990年代から頻繁に使われるようになったそうです。


 では、何故「リベンジ」に「再挑戦」という意味があるのでしょうか。本当のところはよく分かりませんが、次のことが考えられるのではないかと私は思っています。


「仕返し」をするためには、もう一度戦いなり、試合なりをしなければなりません。ゆえに、その部分「再度戦う」「再度試合をする」にフォーカスしたために、「再挑戦」という使われ方をするようになったのではないか、と想像します。(想像ですので、テキトウに聞き流してくださいませ 笑)


 さて、「リベンジ」を「再挑戦」という意味として使う方も多くなっているようですが、この意味として使うことを許容している辞書はそう多くありません。


●「リベンジ」を「(失敗したことなどに対して)再挑戦する」と捉えることを認めている辞書

『明鏡国語辞典 第三版』

『三省堂国語辞典 第八版』

『岩波国語辞典 第八版』


●「リベンジ」を「(失敗したことなどに対して)再挑戦する」と捉えることを俗語として認めている辞書

『デジタル大辞泉』


●「リベンジ」を「(失敗したことなどに対して)再挑戦する」と捉えることを認めていない辞書(⇒はっきりと「誤り」と書かれている辞書)

 なし


●おそらく「リベンジ」を「(失敗したことなどに対して)再挑戦する」として捉えることを認めていない辞書(⇒言及されていない・用例がないため)見出しがない

『新明解国語辞典 第八版』

『旺文社国語辞典 第十二版』

『新選国語辞典 第十版』

『学研現代新国語辞典 改訂第六版』

『旺文社 標準国語辞典 第八版』

『大辞林4.0』

 

 このようになっています。はっきりと「誤りである」としている辞書はなかったものの、意見は大きく分かれているようです。

 全体として見てみると、認めていない辞書のほうが多いですが、使われている頻度もかんがみて認めている辞書も複数あります。このことから、「リベンジ」を「再挑戦」という意味で使うか否かは、状況に応じて判断するのがよいのかなと思います。


〈補足〉

*上記に述べたように、英語の「revenge」には、日本語での「リベンジ」のように「再挑戦」という意味はありません。「復讐」という意味合いが強いです。よって、英語で「revenge」を使う際は、お気を付けください。

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