第3話 仲間たちとの暮らし

俺の名前はカイ。数年前からのスピリチュアルムーブメントに影響されて、相棒のヒロと共に2年前からこのエコビレッジを作っている。

俺は当時の自宅を売却し、貯金と合せ3千万円程つぎ込んで土地を購入し、ログハウスを建てた。井戸を掘ったり、畑を作ったり、小屋を建てたりと、全てが初めてだらけで楽しい。俺達の生き方に賛同して集まって来る人もいて、佐藤さん夫婦も数ヶ月前から共に暮らす様になった。

今日はクリスマスイブ。SNSで俺達の活動を知り、何時も応援してくれているアキちゃんも遊びに来ていて、これからパーティーをする予定だ。実はヒロとアキちゃんは付き合っていて、その事を俺に隠しているのだが、俺とヒロとは高校の時からの親友だ。バレバレだったりする。

後で佐藤さん夫婦が得意のギター演奏を披露してくれるそうなので、今から楽しみだな。

そういえば、スキー場のオープンが今日だったはずだ。俺達のログハウスを建てている時に丁度ホテルの建設途中であったから、現場の職人さん達と仲良くなって、たまに一緒に酒を飲んだものだ。今では懐かしい思い出でだ。


いつもの仲間と、いつもの酒と、いつもの笑いと。贅沢なパーティーでは無いが、楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。


「ヒロ、俺は小屋で寝るからさ。今日は二人でここ使えよ」


「おう!いいのか?」


「ああ、貸しだぞ」


「もう!二人でコソコソと何の相談?」


「いや、飲み過ぎたから小屋に行って寝るよ。皆んなまだ飲み足りないだろ?」


「え〜これからなのに、カイはお酒弱いんだから!」


「悪い悪い、じゃぁ、おやすみ」


外に出ると流石に寒い。まつ毛が途端に凍って行く。夕方から降り始めた雪が次第に強くなって来ていた。


「明日の朝は雪かきしなきゃな。」


小屋の扉に手をかけたその時、空間が歪んだ。


「こりゃ、本当に飲み過ぎたかな」


ふと空を見上げると雪雲も蠢いて紫色に光っていた。


「ヤバい、本当に飲み過ぎだ」


素早く中に入ると、ベットにもぐり込む。


微かに聞こえるギターの音と笑い声。俺はちょっと寂しい気分で眠りに就くのだった。

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