OLE BØRUD The Best 2013年作

 もともと Keep Movin のアルバムを買おうとしたが、たまたまちゃんとした価格の在庫がなかったのでこちらを入手。ベストアルバムなので全曲解説みたいになるのは仕方ないところ。

 1曲目は未発表曲 Better Deal 、この一曲のためこのアルバムを作ったようなかたちになったと考えてもいいようだが、曲はファンキーなR&B で個人的にプリンスを髣髴とさせる。こんな曲にハードなギターソロが入るあたりは独特、そこもプリンス的。

 2曲目 Step Into My Light は Keep Movin からの曲。彼の曲をAORとして受け入れている人が多いようだが、この曲からでももうそうでもない気がする。R&B 的曲調とシャキッとしたまとまりは都会的で、東京のホワイトカラーには合いそうな気がするが、AORなのかなあ〜。どちらかとダンス用ファンクと言う感じ。

 3曲目City Lights はアルバム Shakin' The Ground からのもの。2曲目と同じ流れ、どちらも彼のヴォーカルが時々スティービー・ワンダーを思わせるところがある。

 4曲目 Through The Fire はデヴィッド・フォスターのトリビュートアルバム Fly Away 〜The Songs of David Foster からの曲で、デヴィッド・フォスターの筆によるもの。ここで雄大なバラード曲になるが、アメリカ的でない気がするし、北欧的でもない(彼はノルウェー人)。彼独特の都会的雰囲気はJpopやKpopに近い感じ。個人的にギターソロを大々的にぶっ込んでもらいたかった。

 5曲目 One More Try はShakin' The Ground から。この曲もバラード。オーソドックスな曲作りは古い我々には心がなごむ、胸キュン曲だ。サビのコーラスあたりなんか特にそうだ。ここでは期待どおりジェイ・グレイドン張りのオーバーダブのギターソロが入って、ヴォーカルコーラスと絡むあたりに感動を呼び起こす。

 6曲目 All Because Of You はShakin' The Ground から。少々ポップながらアルバム冒頭のダンス曲でなく、前曲のバラードから自然にこの曲に流れて入る感じ。どちらかとオーソドックスな曲作りだ。

 7曲目 Keep Movin' は同タイトルのアルバムから。ここで再びダンス曲調に。個人的にこれもプリンス的に聴こえる、いや、似てる曲がプリンスに多い気がする。これも彼らしくシャキッと。

 8曲目She's Like No Other はKeep Movin から。この曲になるとAORバラードと言う感覚にを覚える。こちらも古き良きオーソドックスなメロディーが豊富で、心をとらえる。スローで雄大なものではないが、すぐに口ずさめるサビはGOOD!

 9曲目Chi-Rho は同名のアルバムから。何かアラビアン風のメロディーの曲で、それをポップにまとめている。演奏もその辺に合わせて、民族音楽的打楽器とシタールが入ったりと雰囲気を盛り上げている。

 10曲目Spreadin' The News はShakin' The Ground から。この曲から、彼の作曲が少々ライティングクレジットを意識しているように感じる。リズムはファンキーな曲だが、メロディーや編曲、曲構成あたりが凝っている。それを実験的に聴こえさせない技量を彼は持ち、そうまとめている。

 11曲目 Broken People はKeep Movin の曲。この曲は思いっ切り実験的と言えるほどのメロディーをバースで使っている。これをオーソドックスなサビでまとめるあたりが彼流のAORバラードだと言える。ここでようやく南国の浜辺に似合う感じだと思うのは私だけだろうか。らしいキーボードとギターソロも入って文句のないAORバラードだ。

 12曲目 Resting Day はKeep Movin から。この曲もバラードで、同じようにライティングクレジットを意識したメロディーから耳に馴染んだサビに持っていくもの。タイトルどおり静の曲調でゆったりとしていて、ホーンセッションのアレンジあたりをスティーリー・ダンのものを持ってきている。オーバードライブしないギターソロもスティーリー・ダンあたりを意識してそうだ。

 13曲目 Rock Steady は Keep Movin からで、1曲目に近いダンス曲。この曲はどちらかとオーソドックスで、全体にワイルドでファンキー。

 14曲目 Shakin' The Ground は同名タイトルのアルバムから。この曲もファンキーなダンス曲だと言える。ベースの激しいラインにサビメロも激しく迫る。ただし、コーラスハーモニーは美しい。途中の曲の展開はプログレ風になるあたりは他の曲でも少々見られたが、ここでは目立っている。

 15曲目の Add Up The Wonders は Chi-Rho からの曲。AORでもファンクでもない、ハードロックバンドがやりそうな曲で、それ以上なんて表現して良いのかわからないが、このアルバムではかなり浮いた曲と言える。14曲聴いたシャキッとしたダンス、AOR調の美しいハーモニーとかの余韻がここで全て消えてしまうかのようだ。スロー曲だがバラード曲でもない。


 都会的ホワイトカラーに合いそうだと述べたが、シティポップ風には聴こえなかった。この点で考えると彼の音としか言いようがないが、北欧のおおらかさとか哀愁とかも全くない。アメリカのバンドにある自然の空気もあまりないし、そんな感じの音世界を求めたいならお勧めだと言える。曲は殆ど彼の筆のようだし、ギターとヴォーカルも彼がとり、最近の古い音楽を作る人をよくあるマルチプレイヤー的な存在だと言える。


 Keep Movin のアルバムを買おうとしたのはアートワークが好きなのと代表作だと言うことだが、ベストで聴く、およそ3枚のアルバムでも全曲良かった。


 ヨットロックとしてレビューしたが、雄大な海洋の上でヨットに乗ったり、椰子の木の下でのんびり暮らすAORとかを求めるのなら彼の初期の楽曲の入ったこのアルバムは勧められない。忙しいスケジュールに馴れた、洗練された人に合うそんなアルバムだ。ただ、殆どの曲にホーンセッションが入っていて、この辺がAOR的。

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