Tangarine Blank Cassette   2024年作

 バンド名は日本語表記でタンジェリンだが、スペルはge の部分がga になっていてタンガリンのようになっている。

 このバンドの実体はオランダの Blinks 兄弟、一卵性双生児の兄弟2人だ。

 いわゆるデュオのユニットだと言えるが、古くはサイモン&ガーファンクルあたりを想像出来るが、音楽性は70年代から80年代だ。

 特につかみの一曲目 The World We Live In はAOR的楽曲の演奏だ。

 繊細なデュオによるハーモニーは確かに S&Gなのだが、個人的には70年代に活躍した England Dan & John Ford Coley あたりを当てはめたいところ。確かに ED &JFC は TOTO のメンバーなどがバックアップしたAORアルバムはあるが、このバンドの楽曲にあるヨットロック感で言うと上述の一曲目はまさにそれ。タンジェリンの勝ち。


 ただ、そんなヨットロック感もアルバムの曲が進むにつれ、やはり繊細なデュオによるハーモニーが70年代初頭に引き戻してしまう。あの紅葉に色付いた秋と言うような、SSW (シンガーソングライター)に近いような。その辺ヨーロッパ在住のバンドの自然な世界猫写なのかも知れない。


 7曲目の Still Kids ではサックスがイントロに入り、またAORの世界にいざなう。この曲がアナログで言うA面最後の曲とクレジットされている。


 B面最後とされる13曲目のタイトル曲はアコースティックギターによる弾き語りで、彼らの基本的スタイルがかいま見ることが出来る。

 そうは言っても前述のAOR的2曲だけで見てもAORではないし、ウェストコーストロックにある乾いた感触もないのでそのどちらでもないが、ヨットロックと呼ぶには異論はないだろう。


 このように述べると70年代の古い少々粗削りな音質が伴って考えがちだが、この点で言うと今現在の最先端のレコーディング技術で作られた なめらかな音質と適度のリバーブがかかった良質なものになっている。

 もしかしたら生成AIで60年代のそんなサウンドも今の最先端の音質に変えられるかも知れない。あの古い音が良いんだよ、と言う人には良くない話ではあるが。


 アルバムタイトルの「空白のカセット」は録音していないテープなのか、虚ろな、単調気味のカセットなのかわからないが、聴く者に古い時代のノスタルジックな心を先入観なしにこのアルバムに対してほしいのだろうか。

 アルバムアートにCD でも SIDE A と SIDE B に分けて書かれたこともそれを主張しているかも知れない。

 A面で7曲、B面で6曲、ボーナス曲一曲と14曲は昔よりはヴォリュームがあるが3分代の曲が多いのでアルバム全体の演奏時間はそんなに長くない。

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