蒼い薔薇の庭で交わされた約束、香ばしいアップルパイの香り、そしてひそやかに揺れる想い。
孤児として戦火の中を生き抜いた少女イルと、黒将軍ジルベルトの出会いは、静かでありながらも心の奥深くまで響いてきます。
ティータイムを重ねるごとに、距離が縮まる二人。
けれど、彼が見ているのは果たして「今」の彼女なのか、それとも失われた誰かなのか。
甘く温かな時間の中に、ふと影を落とす瞬間があるたび、心が揺れます。
誇り高く生きるジルベルトの不器用な優しさと、イルの一途な想いが絡み合う時間は、まるで一輪の薔薇のように美しく、そして儚げです。
過去と現在が交錯し、やがて運命は思わぬ形で動き出します。
最後に残るのは、アップルパイの甘さか、それとも――。
蒼薔薇が見守る静かな庭で、時を超えた物語が紡がれています。