第7話 憂いの洞窟と立ち止まる心
次にセイレンとルミナがたどり着いたのは、霧に包まれた「憂いの洞窟」。洞窟の入口は暗くひんやりしていて、中に入ると光がほとんど届かないようでした。壁には冷たい水滴が伝い、静けさの中にポツリ、ポツリと音だけが響いています。
「ここ、なんだか息苦しいね…。」セイレンは胸の奥に重い感覚を覚えました。
「憂鬱な気持ちが集まる場所だから、そう感じるの。」ルミナがそっと肩に手を置きました。「でも、この洞窟には大切な学びが隠されているのよ。」
二人が奥へ進むにつれ、セイレンは足を止めました。洞窟の中ほどに、うずくまった影が見えます。それは、暗闇の中で泣いているように見えました。
「誰かいるの?」セイレンが声をかけましたが、返事はありません。ただ影が、かすかに動いたように見えました。
「セイレン、それは憂鬱そのものなの。」ルミナが小声で言いました。「心が沈んでいる時、こうして立ち止まってしまうのよ。」
「じゃあ、どうすればいいの?」セイレンは影に近づこうとしましたが、突然足元が崩れ、小さな落とし穴に足を取られてしまいました。
「わっ!」セイレンが転びそうになると、ルミナが素早く光を放ち、助けてくれました。
「憂鬱の中では、急いでもがくと逆に深みにはまるの。時には立ち止まって、自分の心を優しく包むことが大切なんだよ。」
セイレンが気を取り直して進むと、洞窟の奥に小さな泉がありました。泉の水面には、静かな波紋が広がっています。泉をのぞき込むと、自分の顔とともに、過去の悲しい思い出が映し出されました。
「これ…僕がひとりぼっちだった時の気持ちだ。」セイレンは目を伏せました。
「憂鬱な気持ちは、悪いものじゃないの。」ルミナが優しく語りかけます。「それは、自分に休む時間が必要だと教えてくれるサインなの。」
セイレンは泉の水を手ですくい、自分の胸に当てました。その瞬間、泉が柔らかく光り、暗かった洞窟が少し明るくなりました。
「憂鬱な気持ちは、こうして優しく包み込むと消えていくんだね。」セイレンは微笑みました。 「無理に追い払おうとしなくていいんだ。」
「そう。それに、自分をいたわることで、また一歩進む力が生まれるの。」ルミナも微笑んでいました。
洞窟の出口に向かうと、道が少しずつ明るく開けていきました。そこには新たな「感情のしずく」が輝いて待っていました。セイレンはしずくを手に取り、次の冒険へと進む準備ができました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます