vivianne

@rui_takanashi

第1話

 縦横無尽に行き交う、人々の群れ。紫陽花みたいな、色とりどりの傘。

 色濃くなっていく、灰色のコンクリート。

 信号機の音。遠くで聞こえる嬌声。リズムを上げる、急かすような雨音。

 その中に、場違いな爆音。

 だけど誰も、足を止めたりはしない。

 ただわたしだけが、そこで立ちすくんで動けずにいた。


 傘も持たないわたしの髪の毛を、雨がどんどん滑り落ちていく。


 目の前の大型スクリーン。

 雨の日の夕方には、不自然に明るいその箱の中に、記憶のままの、あなたがいた。

 わたしの知らない誰かと。わたしの知らないギターを手にして。

 わたしの知らない曲を。

 わたしの知ってる笑顔で。



 

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