体育祭編

25話 合宿が終わって

 合宿が終わって数日が経った。


 それでも、学校の空気はまだざわついている。


「琴音ちゃん、結局退学になったんだって……」

「マジかよ、さすがに可哀そうじゃね?」

「でも、あんなことしたら当然だろ」

「でもさぁ……玲司もちょっとやりすぎじゃね?」


 クラスのあちこちから、そんな声が聞こえてくる。


 俺も多少は思うところがある。


 ちょっとやりすぎたか?でも、琴音が俺を陥れようとしてきたんだし、当然の報いだろ。


 あのまま泣き寝入りしてたら、俺は一生「女子に暴力を振るった最低男」ってレッテルを貼られてたんだぞ? それに比べりゃ、停学……じゃなくて、退学か。まあ、そこまでいくとは思ってなかったけどな。


「よう、話題の人」


 そんなことを考えていると、成田がやってきた。


「……なんだよ」

「めちゃくちゃ有名人になってんなと思ってな」

「まぁな……」

「ていうか天宮琴音、なんであんなことしたんだろうな?」


 成田の言葉に、俺は一瞬だけ言葉に詰まる。俺は知っている。琴音は悠斗を守るために、俺を陥れようとしたんだ。


 だけど、それを言うわけにはいかない。

 

「あー……まあ、気が狂ってたんじゃね?」

「お前、もうちょいオブラートに包めよ」

「包んだら俺じゃねぇだろ」

「いや、それもそうなんだけどさ」


 成田は肩をすくめて笑う。


「でも、お前も微妙に気にしてるだろ」

「え?」

「やりすぎたかもって思ってる顔してる」


 机に頬杖をついて俺は「……うるせぇな」とめんどくさそうに返した。


「いや、だってよー退学はキツくね?」

「でも俺が黙ってたら、こっちは人生終了だったんだぜ?」

「まあ、それはそうだけど」


 腕を組んで、成田は「うーん」と唸る。


「つーかさ、お前、琴音の動機とか知ってんじゃね?」

「知らねーよ」

「ホントかぁ?」

「ホントホント。俺はただの被害者です」

「うーん、嘘くせぇなぁ」


 そう言って成田はジト目で俺を見るが、俺は全力でシラを切る。


「まあ、もういいけどさ。琴音のことは忘れて、平和に生きろよ」

「お前が言うな」

「いや、マジで。せっかく無罪放免になったんだから、楽しまないと損だぜ?」

「……お前、意外といい奴だな」

「意外とってなんだよ!」


 成田がツッコんだその時、俺のスマホが震えた。


『今日はお店にいますので、待っています』


 スマホの画面を見ると綾乃からのメッセージだった。


 そういえば綾乃から指名券なるもの貰ったけど、まだお店へ行ってなかったな。


「お? なんか良い事あったか?」


 メッセージを見ていると、隣からニヤついた成田が見ていた。


「うるさい、勝手に人のスマホを覗くな!」

「えー気になるじゃんか!」


 ニヤつきながら、からかう成田を横目に俺は「了解」と返信した。


 メイド服を着た綾乃か……。ちょっと楽しみかも。









(悠斗視点)


 スマホの画面を見つめる。


 琴音に送ったメッセージは、既読すらついていなかった。


 何やってんだよ、琴音。退学になったことは、俺もショックだった。


 玲司が生徒の前で堂々と暴露したことで、琴音の悪事は完全に明るみに出た。当然、琴音を擁護するような声は少なく、彼女は学校に戻ることすら許されなかった。


「……くそっ」


 無意識に拳を握る。


 玲司のやったことが間違いだとは言わない。むしろ、俺が止められなかったのが悪いのかもしれない。


 でも──


「どうしたの? 篠宮君。難しい顔しちゃって」


 ふいに、背後から軽やかな声がした。


 振り向くと、そこには麗奈が立っていた。


「神崎さん……?」

「何か悩んでいる顔をしていたから、ちょっと気になったの」


 優雅に髪をかき上げながら、麗奈は俺をじっと見つめる。


「……別に、大したことじゃない」

「嘘つきね。琴音のことでしょ?」

「……」


 返答に詰まった。


「やっぱりね」

「パジャマパーティには参加してなかったけど、城咲君が大胆なことをしたって話は聞いてるわ」

「……そうか」

「琴音、連絡返してくれないの?」


 そう言われて俺は黙って頷いた。


「……仕方ないわよね。退学になって、しかも玲司に悪事を暴露されちゃったんだから」


 麗奈はどこか楽しそうに言う。


「お前、なんか楽しんでないか?」

「そんなことないわよ?」

「嘘つけ」

「ふふっ」

「でもね、悠斗。あなたがどれだけ気に病んでも、琴音の決めたことは琴音の決めたことよ」

「……分かってる」

「本当に?」

「……どうしろって言うんだよ」

「どうもしなくていいのよ。ただ、あなたはあなたのままでいればいいの」


 俺の隣の席に麗奈は座ると少しだけ表情を和らげた。


「……付き合ってたの、分かってるわ」

「……」

「だから、心中お察しするわ。つらいでしょう?」


 俺は答えなかった。麗奈はそれ以上何も言わず、俺の肩を軽く叩くと、ゆっくりと去っていった。


 どうすればよかったんだろうな、琴音。俺は再びスマホを見つめながら、深く息を吐いたのだった。


——— ——— ——— ———


ここまで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思った方は応援コメントや☆を頂けるとモチベになりますので何卒宜しくお願い致します。


現在新作も連載中です。こちらも合わせて良ければ読んで頂けると嬉しいです。貴族たちの陰謀で左遷された俺は、呪いの館で再会した幼馴染に『もう二度と離さない』と囁かれる「https://kakuyomu.jp/works/16818622171398700224

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