14話 悠斗と琴音の嫉妬
悠斗視点
「……は?」
俺は目を疑った。肝試しを終えてゴール地点に戻ってきた俺は、ふと視線の先にいる二人を見て凍りついた。綾乃が玲司と……密着している?
しかも、ただの偶然とか、ふざけてそうなったわけじゃない。綾乃は頬を赤く染め、どこか恥ずかしそうに玲司の腕に体を密着させていた。玲司も驚いた顔をしながらも、まんざらでもなさそうに綾乃を見つめていた。
なんだ、この状況は?
「……なんで……?」
言葉が喉の奥で引っかかり、思考が真っ白になった。理解が追いつかない。ありえない。そんなはずがない。
俺はあんなにも綾乃に玲司が危ない奴だと力説して言い聞かせたはずなのに……綾乃は、まるで乙女のような顔をして、玲司を見つめている。
それを見た瞬間、俺の胸の奥から込み上げてくるのは、信じられないほどの怒りと、焦りと、苛立ちだった。なんで……なんであんなやつなんだよ……っ!
握りしめた拳が震える。クズ人間である玲司に綾乃が惚れるなんて、そんなことがあってたまるか。
……そうだ。これはたまたまの出来事。たまたま肝試しで手を繋ぐことになっただけで、綾乃の本心ではない。そうに決まってる。
怒りを露わにしていると、隣にいた琴音が「大丈夫? 悠斗君」と心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫な訳ないだろ!? 綾乃が……あの城咲玲司とくっついてるんだぞ?」
「悠斗君……」
なんで……なんでよりによって玲司なんだよ……!
声が震える。拳をギュッと握りしめ、爪が食い込むほど強く力を入れた。玲司、アイツはただの悪役だ。俺がこの物語の主人公なら、あいつは俺を引き立たせるための障害にすぎない。なのに……。
綾乃は、まるで玲司を恋愛対象として見ているような表情を浮かべていた。
その光景が、どうしようもなく気に入らなかった。こみ上げる怒りをどうすることもできず、俺は思わず地面を蹴りつける。
玲司が、楽しげに笑っている。綾乃も、それを咎めるどころか、頬を赤らめながら微笑んでいた。
なぜ、そんな顔をする?
お前は、俺の隣にいるべき存在だろう?
なのに、なぜ?その隣に立っているのが、俺じゃないんだ?
全身が熱くなる。喉がカラカラに渇く。胸の奥がひどくざわつく。
「悠斗、大丈夫?」
琴音の声は、どこか優しげだった。だけど、俺はその声にすら苛立ちを感じてしまう。
大丈夫なわけがないだろう。このままでは、俺の……いや、この世界の「正しい物語」が壊れてしまうぞ。
……こんなのおかしい。綾乃は、俺が助けるべきヒロインのはずなのに……。……そうだ。このまま玲司を野放しにしてはいけない。
琴音視点
「……悠斗君……」
隣で怒りに震える悠斗君を、私はそっと見つめた。
悠斗君とは、少し前から一緒に過ごすようになったけど、いつも自信に満ちていて、どんな時も前を向いて進んでいく人だった。
だけど、今の悠斗君は違う。玲司を睨みつけ、拳を握りしめ、憎しみに満ちた顔をしている。
悠斗君がこんな顔をするのは、城咲玲司のせい……?
綾乃ちゃんが城咲玲司と手を繋いでいることが、悠斗君にとってそんなに許せないことなんだ。
私は驚くと同時に、心の奥がモヤモヤとした感情に支配されていくのを感じた。
……それは嫉妬だ。
私は悠斗のことが好きだ。
だけど、悠斗君は今、綾乃ちゃんのことで怒り、苦しんでいる。
綾乃ちゃんが城咲玲司と親しくなることで、悠斗君がこんなにも苦しんでいるのなら……城咲玲司さえいなければ、悠斗君はこんな顔をしなくていい……綾乃ちゃんは悠斗君のものだ。
城咲玲司は、それを邪魔する悪役。
なら──玲司……あなたを排除してあげる。悠斗君を苦しめる存在は、私が消すしかない。
私は、心に固く誓った。
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