きらきら

野宮麻永

第1話 あの頃のわたしに逢えたら

もし、あの頃のわたしに逢えたら――





「ねぇ、お願いっ」


「そんな甘えた声でお願いしてもだめだからね」



ホームルームが終わるとすぐに、友達の小山美姫みきがわたしの机に駆け寄って来て、まるで子猫が戯れてくるみたいにまとわりついてきた。



「そんなこと言わないでよぉ。親友の頼みじゃん」


「知らなーい」



本人の言うとおり、間違いなく美姫は親友で、今日もいつものように一緒に教室を出て帰るところ。



「わたしじゃ何回聞いても教えてくれないんだもん」


「だったらわたしが聞いても無理だよ」


「だかーらー、聞くのは鷹瀬先生の連絡先」


「どうして鷹瀬先生?」



美姫の言うことが理解できずに足を止めた。




GWが明けてすぐ、わたしたちのクラスに教育実習の先生がやって来た。

担任が体育の先生だったからか、来たのは男の体育の先生で、水上将生と言う名前の、いかにもモテそうなイケメン。


高校生のわたしたちにとって、教育実習の先生というのは大人だけど、先生ほどの距離はなくて、ほんの少し手を伸ばせば届きそうな存在。


水上先生に一目惚れした美姫は、何かと質問攻めにして、今現在彼女がいないことまでは聞き出せたものの、連絡先となるとガードが固く教えてもらえずにいた。




「将生を射んとせば、まず鷹を射よ、ってね」


「そんなことわざないよ?」


「水上先生の連絡先を得たければ、まずは鷹瀬先生を攻略せよ、ってこと。同じ教育実習の鷹瀬先生に連絡先を教えてもらって、そこから水上先生の連絡先をGETするのっ」




学校に来た教育実習の先生は、男2人に女1人の計3人。

みんな大学はバラバラだけど、同じ教生という仲間意識もあってなのか、3人は仲が良さそうに見える。


体育の水上先生と化学の鷹瀬先生は同性だからなのか、朝の時間帯なんかはよく一緒にいるけれど、爽やかスポーツ系の水上先生と、真面目そうでメガネをかけた地味目の鷹瀬先生では、一歩学校を離れてしまったら接点なんてなさそうに思える。

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