白うさぎと魔法使い

魔法使いは森の中で白くてかわいらしいうさぎを見つけました。

持っているお菓子で気を引こうと思っても、白うさぎは見向きもしません。


悲しくなった魔法使いは、近くに黒うさぎの群れを見つけました。


黒うさぎは人懐っこく、お菓子を見せなくても勝手についてきてくれます。

魔法使いは黒うさぎを集めると、白くなるように魔法をかけました。


かわいい白うさぎに囲まれて嬉しくなった魔法使い。

魔法使いに見向きもしなかった白うさぎは、それでも知らん顔。


知らん顔の白うさぎを見た魔法使いはニセモノの白うさぎに囲まれている自分を恥ずかしく思いました。


「なんで僕は魔法を使ってあの子のニセモノなんかを作ったんだろう。

本当に好きになってほしいのは、あの子だけなのに」


寂しくなった魔法使いは、黒うさぎたちを元に戻すと、ひとりでお城へ帰りました。


お城に帰ると、魔法使いは白うさぎが好きになってくれそうなお菓子を考えました。

にんじんのケーキ、野菜のクッキー。

どれも手作りです。


作ったお菓子を持って白うさぎのいた場所へ行くと、白うさぎは魔法使いをにらんで逃げようとします。


「待って! 君のためにお菓子を作ってきたんだ」


カゴの中のお菓子を見せると、白うさぎは警戒しながら近づいてきます。

お菓子のにおいをかごうとしたところに、黒うさぎの群れがやってきました。


白うさぎは逃げて行ってしまいました。


「君たちのせいで、僕は白いうさぎさんと仲良くできない!」


怒った魔法使いは、黒うさぎたちを叱りました。

すると、黒うさぎたちはその場から去っていきました。


魔法使いが悲しくなってその場で泣いていると、先ほど逃げた白うさぎがそっと寄ってきました。


ふんふんと魔法使いのにおいをかぐと、手をぺろりと舐めます。


魔法使いは嬉しくなって白うさぎを抱き上げました。


そしてかごに入れると、お城に連れて帰りました。


それから魔法使いは、白うさぎを大事に大事に育て、一緒に暮らしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おやすみまえのごほん。 浅野エミイ @e31_asano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る