愛読していた小説の豚貴族に転生したのだが、やりたいようにやったら、何かおかしい事に成った。

まとい。

第1話 転生した…らしい?

 目覚めると、視界も何もかもがぼやけていた。体も不自由だし、言葉も発せないし何が起きたのだろうか。とりあえず眠い、今日は休みの筈だから寝なおすとしよう。


 はい、寝なおして起きてからもぼやけてはいたのだが、状況は把握しました。そりゃ、軽々しく持ち上げられて、ポロンされればわかるよ。転生したってことぐらいは。

 前日は、お気に入りの小説の更新が有ったので、それ読みつつ酒飲んでたら眠く成って…というか、意識が遠くなって気絶したんだったか、多分あれそのままポックリいったんだろうなあ。

 はい、中身は言うまでもないけど、四十路一歩手前のおっさんでした。ぎりぎり某協定内を綱渡りする。ように見せかけて、月勤務日数が、週休二日の筈なのに、三十三日となっている。時空どこ行ったな虚無企業の社畜のヒラでしたが。趣味は家庭菜園、窓際プランター栽培だ。食費が浮いてかなり良きでした。浮いたお金で、ちょっとソロキャン、人付き合いはそこそこソロキャン同士の顔見知りと、現地で仲良く程度です。

 まあ、今世は何か聞き覚えのある名前の子供なんだけど。さらに母親が、とんでもなくあれだ、前世の俺の半分以下の年齢じゃないのかって見た目なんだが。

 幸い?な事に異世界転生って奴ですよ。

 しかも魔法とかはあるっぽい、あとなんか貴族かお金持ちの家らしい、だってメイドいるんですよ。亜人もいるんですよ!お世話してくれるメイドさん狐耳としっぽあるんですよ!授乳?慣れたものです。だってもう半月経ちましたから。


「あ~あぁぁああ~」


 そういって、メイドに手を伸ばすと、しっぽが手元に。


「坊ちゃま、又ですか。仕方ないですね。本来は、家族以外駄目なのですが。」


 モフモフを堪能した、さすがに咥えたりはしてない。

 近い未来で知ったんだけど、獣人の尻尾は家族以外で触っていいのは、恋人だけらしい。


 魔法あるっぽいんですよね。かーちゃん身体強化使ってるっぽくて、俺を高い高いで天井一寸手前まで投げるわ(天井高いんで三メートルは、いってたが当たらなかったし、外だと十数メートル投げた)んでもって、落ちる速度ふわふわなんですよ。

 最初投げられたときは、面白いより怖いだったんだけど、ふわふわ落ちる感じでおもしれーってなって、魔法あるって気付いたんですけどね。

 魔力があるだろうと、感知に挑戦したができなかった。ならやる事はひとつ、感知できるまで挑戦と、ひたすらに感知しようと頑張ったら、一か月ぐらいで何とか見つけました。自分の中にあるのも見つけて、動かそうと挑戦するも、うんともすんとも言わなかったが、しばらく続けると動いた。やったと思ったら勢い付いたのか、何か突き破る感覚と同時に全部抜けてって…ええ、盛大に口から虹色発射ですよ、そりゃもう白いアレ母乳を結果家の中は大騒ぎ。


「奥様!坊ちゃまが~!」

「ええ、ん?魔力枯渇?まさか、魔力枯渇症!?」


 なんか、魔力枯渇症って病気があるっぽい。それと勘違いされて医者呼ばれて、検査されて、それはないって事が判って、じゃあ何だって話で、魔力に触れて無意識で、魔力動かしたんじゃないかって話になって、天才だの、魔力暴走がだの、命が危ないだの言われて、怖く成って誰も見て無い所で、ほんのわずかだけ、抜けない程度に動かすことを努力しました。

 結果、魔力操作してると、膜みたいなのが有って、それをつついてると、たまに僅かだけど広くなるのに気付いて、一定迄広く成るとそれ以上広がらないようなので、元の大きさにぎゅっぎゅって圧縮してを繰り返して、という感じで継続する事早一年でございます。なお、それで魔力が増えてるっぽいんだが、それ毎に空腹度増して、もりもり飲んでる。


 あ、父親は生後半年でようやく会えました。そこで気づきました、名前と家名から、亡くなる前に読んでた小説の豚貴族じゃねーかって。父親は、クッソガタイがいいのに、なぜか豚貴族だけは、小悪党でぶっくぶくの豚だったんだ。

 え?俺の名前ですかマルーセル・カルドッグって、いうんですけどね。まんまですよねこれ、アナグラムやらなんやらで、ルールル噛ませ犬ですよ。元の小説だと武闘派伯爵家の家の嫡男なのに、ぶっくぶくで手下がいて、頭もちょっと弱くて、ちょっと我儘なこと言って、気遣った手下がちょっと悪さをする感じなんですが、それに目を付けたガチ悪な方々が、騙して利用して切り捨てられる。そしてまあ主人公にすべてを暴かれて、捕縛され家から追放されるんです。その後は描写が、ほぼ覚えていない番外編以外は無かったので判らない。主人公が新入生で、自分が最高学年だった筈なので、まだまだ先ではある。

 現状分っていることはこの家相当裕福です。家の中を、抱っこされた状態で散歩(かなり広い)で、連れまわされて気付いたんですが、歴代当主の肖像画がすべて、十二、十五、代替わり時の三枚並んでいて、全員十二歳時点はぽよぽよ、十五でなんかガタイがいい感じに、代替わり時っぽいのは、ほぼガチムチでお前まだ全然現役だろって、見た目なんですよ。そしてさらに驚いたのが、高祖父様ひいひいひいじいさんまだ存命らしい、百三十八歳だって、何で知ったかっていうと、代替わり時の絵の下に没年齢記載されてるの軒並み九十超えてて驚きだけど没年齢記載ないの。なぜか高祖父の後の三代が同時期では、って没年齢なのは、そのうち聞いてみようと思う。

 とりあえずまあ、舌足らずですが、生後半年ぐらいには何とか、声出せるようになりまして、最初に言ったのが、いつもの狐メイドに向かって手を伸ばしつつ、「かちゃーしっお」です。

 尻尾もふもふ大好きっ子として、家の中で認識されつつありましたが、この喋ったことが原因で、父親が上司脅して帰ってきたらしい。

 後で聞いた話だが「気絶した生まれて間もない子供の見舞いに行かせないどころか、貴重な初めての言葉も聞き逃したのに、まだ息子に会いに行く事すら許可しないとはどういうことだ。そもそも臨時でここに派遣されるのも、妻のお産が近いからって、断ってたのを無理やり押し付けたよな!」と、上司を片手で吊り上げて言ってたそうです。

 なお、母親は「まー」父親は「ゴー」と呼んだ。マーガレッタと、ゴースって、名前らしい。

「とうしゃま!かあしゃま!」

 流石に一歳児ともなれば、前世も有るおかげか、なんとか会話が出来る程度の活舌になった。

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