第18話

あふれた涙に気が付いて、和未は目をさました。

 時計を見ると、もう六時だった。

 涙を拭って起きて、朝食を用意した。二人前を用意し、一皿に盛り付けてテーブルに置いた。


「盛り付けも二人分にしろ」

 起きて来た晴仁に言われ、和未は慌てて盛り付け直した。

 食後、晴仁は食器を食洗器に入れて出勤した。一人分は手つかずでテーブルに残された。


 和未はおずおずとテーブルについていただいた。

 彼が自分にきちんと食事をくれた。気付いて、胸が温かくなった。


 夜、晴仁はチョコレートやらゼリーやらプリンやら、いろいろ買って帰って来た。

「食え」

 夕食後、晴仁にプリンを出されて戸惑う。

 こういうおいしそうなものは自分が食べていいものではなかった。


「……命令だ。食え」

 和未は震えた。命令に従わないと殴られる。


 席に座って震えながらプリンを食べた。給食の固いプリンとは違っていた。なめらかでやわらかく、甘くて甘くて、しびれそうだった。


「おいしい!」

 思わず晴仁を見ると、彼はにっこりと微笑んでいた。


 心臓が止まりそうだった。

 そんな優しい微笑を向けられるなんて、亡くなった母以来だった。


 あふれた涙を必死にこらえた。きっと、怒られてしまうから。


「泣くのを我慢しなくていい」

 晴仁が手を上げた。


 殴られる。

 びくっと震えると、その手は和未の頭を優しく撫でた。


 嗚咽をこらえきれなくて、和未は泣きながらプリンを食べた。甘くておいしいはずのプリンは、しょっぱくなってしまった。




 土曜日。

「そろそろいいか。出掛けるぞ」


 先に昼食を終えた晴仁は、和未が食事を終えるのを見計らって言った。和未は恐れ多くて彼と一緒に食べられなかったからだ。

「行ってらっしゃいませ」

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