隣に越してきたギャルは、どうやら俺のことが好きらしい。
橘ふみの
勘違い男爆誕
俺は
だいたいなぁ、アラサーで童貞拗らせてる野郎にロクな奴なんていねぇぞ? なんっかしらがある決まってんだろ。そんな奴らが魔法なんざ使えてみろ、犯罪者量産するだけだっつーの。
あ? お前は童貞じゃないのかって? んなもん言わずもがなだろ、愚問だな。
(小声)紛うことなき童貞に決まってんだろ、いちいち言わせんな察しろ。同士よ、永遠なれ!
別に女を抱けるタイミングなんざ腐るほどあった。ぶっちゃけ容姿だって中の中くらいはあるし? それなりに青春とか送ってきたし? 彼女だのなんだのそりゃ居た時期もあるわけでな……まあ、長続きしたことはねぇが。大概、そろそろセックスしてもいいんじゃね? っつータイミングで別れんだよなぁ、毎っ回。俺はこの現象に『手繋ぎ以上キス未満症候群』と名を付けた。ったく、別れる前に1発2発くらいヤらせろっつーの。
あ? そんなセックスしたいなら風俗行けよって? 馬鹿野郎が! んなもん行くわけねぇだろ。こんな俺にだってプライドっつーもんがあるわけで、金を払ってまでセックスしたくねえっつーの。だいたいなぁ、んなことする金あんなら推しのAV買いまくって1日中しこたまヌきまくるに決まってんだろ、馬鹿が。んな野暮なこと聞くんじゃねえ。
「うーし。今日は幾億年ぶりに貧乳ギャルをオカズにしますかぁ」
もちろん
あ? アラサー童貞が選り好みしてんなよって? うっせぇわ、アラサー童貞にだって人権っつーもんがあんだよ! 選ぶ権利っつーもんが備わってんだよ!
「……ん? 誰だ? あれ」
お世辞にも綺麗とは言いがたい俺が住んでるアパート。そんなウチの玄関ドア前に、この先一生交わることはないと断言したばっかの
俺は自分の過去に過ちをおかしていないか瞬時に脳内で情報を開示してみた。そして、導き出された答えは“生まれてこの方ギャルとの経験値純度0
「なんだ、俺ん家になんか用か?」
俺は少し離れた所からスマホをいじってたギャルに声をかけた……。いや、別にビビって少し離れた所から話しかけたわけじゃねーぞ? 何事もまずは様子見すんのがセオリー。
「お、アンタお隣さ~ん?」
俺を見て手を振るギャルを見て驚愕した──。乳でっけぇー。つーか可愛いー。なんだぁ? このシチュエーションは。勝手にギャルゲー始まった系か? これ。ギャルゲーの攻略なら任せろ、それで選択を間違えたことは一度だってねえ。
「アタシ隣に越してきた
おいおい、イマドキ律儀にお隣さんへ引っ越しの挨拶するとか珍しい奴もいたもんだな。
「あ、ああ、どうも。俺、飯塚」
「下の名前は~?」
「あ? ああ……達巳」
「りょ!
おいおい、イマドキ律儀に引っ越しの挨拶でタオルとか渡してくる奴いんだなぁ、すげえ。
「あ、ああ、ご丁寧にどうも」
「いやぁ~、大家っちに聞いたらこの時間しか帰って来ないよ~とか言ってたから待ってたんだよね~! マジさーむっ!」
つーか大家っちって、たまごっちでもあるめぇし。にしても、マァジで乳でけぇ。顔面偏差値たっけぇーし……ん? 心なしか頬がほんのり染まって見えるのは気のせいか? いや、気のせいではなさそうだ。ま、まさか……! 俺に一目惚れパターンかぁ!? これ。いやぁ、俺も罪な男だねえ、まったく。そりゃこんな若ぇ女だ、俺の色気に当てられても仕方ないわな。自分で言うのもなんだがスタイルはいい自信あんだよ。例えるなら俳優の竹内
「んじゃ、これからよろしくね~?
「お、おう。なんか困ったことあったら言えよ」
どうだぁ? この頼れる男感満載の俺。
「ええ~!
ほれ見ろ、可愛い顔して喜んでやがる。こんな
「お、おう」
『たつみんめちゃタイプだわ~! アタシと付き合わない? てきなぁ!』まあ、次に飛んでくるセリフはだいたいこんなもんだわな、俺の予想では。
「さーむっ! じゃーね!」
「……お、おう……じゃーな」
ウチの隣の玄関ドアを開けて、そそくさと姿を消した
ま、まあ、あれだよな、あれ。あれだよあれ。『初日に告るとか軽い女って思われたくないしィ~』てきなやつでしかないよな、うん。さすがの俺も若ぇ女と付き合うってんなら色々と調べなきゃなんねーことあるし? 準備期間っつーもんが必要になるわけで──。
「うし、今日のオカズは爆乳ギャルに変更だな」
──── 数日後
「にしても、無駄にいい天気してやがるなぁー。眠ィ……」
昨日遅くまでオナってて寝不足とか笑えねえ、一体いくつだよ俺。カーテンの隙間から差し込む朝日の光が……俺を直撃して容赦なく攻撃してきやがる。俺の睡眠妨げやがってクソが。それにしても休日に限って早く起きるのって一体なんなんだ? 休みの日くらいゆっくり寝かせてくれよ。
「こりゃ天からお告げかねえ」
溜め込んだ洗濯物やれっていう──。
洗濯カゴにたんまり入った服やらなんらって地味に重てぇよなっと。窓を開けて外履きのサンダルに足を通し、一歩踏み出した時だった。
「ん?」
なんかツルッとしたぞ、ツルッと。なにかを踏んだであろう足を退けて足元を見てみると……な、なっ、なんじゃこりゃァァ!!!! お、おっ、おパンティー!? しかもTバックおパンティー!? おまっ、どっから来たんだよ! このアパート、ジジィとババァしかいねぇはずだが!? オイオイオイ、勘弁してくれよ気色悪ィ……って、ジジィが女もんのTバックおパンティーなんざ履くわけがないわな……変態趣味がなければの話だが。いや、マジで頼むぞアパートのジジィ共。
んで? 仮にこれがババァのでも、まあ問題はないっちゃないわな? 性別上は……いや、想像もしたくねえ。こんな若ぇ女が履くようなもん履くなや、年相応なもん履いとけよ……まあ、ババァがなにを履いてたって問題はねぇんだがな、“性別上は”。
いや、待て、待てよ? 俺は大事なことを忘れてはないか? ここのアパートに今住んでのは、ジジィとババァだけじゃねえ。てことはだ、つもり、どういうことかと言うと……? こ、これは──
「どうすんだよ、これ」
とりあえず拾おうと手を伸ばし、寸前でピタリと動きを止めた。どうやら俺の優秀な
「おい、こういうのって素手で触っていいもんなのか?」
まあ、俺に惚れてる
火ばさみなんてどうだ? 火ばさみが一番無難だろ。
「火ばさみっつーもんが我が家にあったかどうか」
いや? 待てよ。こんな露骨におパンティーが落ちてるなんておかしくねぇか? たまたま俺んとこのベランダにって、そんな偶然あるかね?
「まさか」
これってもしかして、
誘ってんのか? 誘われてんのか!? これ! そうだよな、おかしいと思ったんだよ。あんなマブイギャルが奥手なはずがねえ。こうやってグイグイくるもんだろうがよ。にしても随分と大胆なことしたな、
「いや、もうちょい他のアプローチ方法あっただろうが」
まあ、俺は嫌いじゃねーけどな?
「さて、
童貞だからって舐めてもらっちゃ困るぜ? どんっだけAV観てきたと思ってんだ。こちとら死ぬほど観てんだよ、
「洗濯物干したら買いに行くか、ついでに火ばさみも」
「よし、洗濯物終了~。えー、まずはホームセンターで火ばさみ買って、その後に薬局だな」
車のキーを握り締め、歌を口ずさみながら車内へ乗り込んだ。
「エ~チケット♪エ~チケット~♪夢のエチケットは
おーーい、某通販番組の
火ばさみと
なるほど、夜這いならぬ昼這いか。いいぜ? 俺は一向にかまわん。積極的な女は嫌いじゃねえ。
「
そんなに待ち焦がれていたのか? ベランダから身を乗り出すほどに。まだお互いのことなんっにも知らねぇけど、これから少しずつ知っていけばいいか。
好きだの愛してるだの俺にはまだ
「昨日干してたパンツ行方不明でさぁ~、
いや、お前が敢えて落としたんだろ? なにを言って……まあ、素直に言えるわけがないわな。ククッ、可愛い奴め。
「もお、マジでお気に入りだったのに最悪~」
ほほーん? お気に入りのおパンティーを俺に差し出してきたってことか。可愛いアピールすんじゃねーか、どんだけ俺に抱かれてぇんだよ
「
「……ん? 警察? 通報?」
「だって下着泥棒かもじゃーん?」
いやいや、待てよ。どんなプレイなんだ? これ。一筋縄ではいかないパターンのやつか? 焦らしプレイってやつ? 『アタシ、
いいねえ、そういうのも嫌いではないし焦らされるのも悪くはねえ……いや、そもそも焦らしプレイってこんなんだったか?
「てゆうかこのバケツの下にあったりして~!」
「あっ……」
パカッと持ち上げれたバケツ。もちろんおパンティーを隠すためにバケツを被せてあったわけで、必然的におパンティーがこにゃにゃちは~。
「あ! やっぱあんじゃーん! たまたまバケツがひっくり返ってかくれんぼ~! てきなぁ!? まじウケる~! じゃ、あんがとね~ん、
おパンティーを片手に手を振り去っていく
「……なるほど? いざ惚れた男を目の前にして怖じ気づいたか、
いいぜ? 俺は大人の男だからなぁ。女を急かしたりはしねぇよ? 覚悟ができるまでいくらでも待ってやる余裕っつーもんがあんだよ。
俺の中心で熱を帯び、激しく自己主張するアレ。
いやっ、これはだな、俺の脳と体は今別行動中なんだよ。仕方ねぇだろ? 俺のインフィニティー(達巳Jr.)はヤル気満々だったっつーことだ。俺は勃ってるインフィニティーをなんとか
────
「おかしい、何かがおかしいぞこれは」
「
ドタバタしながら玄関ドアを開けた時、同じタイミングで隣から出てきたのはもちろん俺に“惚の字”の
「お、おう、はよ」
俺が声をかけると顔を上げてこっちを見た
だがしかし、
「悪い、今時間がねぇんだ。帰ってきたら相手してやっから、な? ちょっと待っててくれ」
さりげなく頭をポンポンと撫でて……ハイ! これで完璧デス! んで、こういう時は大人の男の色気を駄々漏れにさせながらウインクをして微笑む。で、相手の気持ちを汲んでやって、何も言わず立ち去るのが鉄則……っと。我ながらうっとりするぜ、飯塚達巳。
「うっし、今日は絶対定時で帰んぞ。健気な
・・・って、いつもの時間になってんじゃんよ。時刻は21時を回って、
「腹減ったな、とりあえず飯……は後だな。なんなら致した後に
シャワーを浴びて歯を磨き、
散々待っても出て来ない
「悪いな、遅くなって」
「……え、こんな時間にどーしたの
おうおう、俺を待ちわびてしんどくなっちまったか。こりゃ悪いことしちまったな。そんな顔真っ赤にして額に冷えピタ貼るほど体が疼いて火照っちまったか? ったく、エロい女は嫌いじゃねえ。
「今からラクにしてやっからな」
「……だったらさ、もうちょい配慮してくんないかなぁ」
「ん? なにがだ?」
「もうこの際だからハッキリ言うけど、毎日毎日うっさいの!!」
毎日毎日うるさいって、どういうことだ? 俺ひとりだぞ? うるさくしてる覚えはないんだが? 独り言だってブツブツ言う程度だし。
「そのせいでこっちは寝不足だっての!」
「おいおい、ちょっと待て。なんの話だよ」
「はあ!? 言われないとわかんないわけ!?」
人間言われなきゃ何も分からない生き物だって知らねぇのか? 古来よりそういう生き物だぞ? 人間っつーもんは。
「声!! めっちゃ聞こえてくんだけど!! お盛んなのもご勝手にって感じだし、毎日シコるのは勝手だけど、イヤホンくらいしてくんない!? 気になって寝れないんだけど!! 気をつけてよね、じゃ!!」
バンッ! と閉められた玄関ドアを見つめ、ただただ唖然とするしかない。
ダァァァァァーー!! しまったァァァァ!!
ここジジィババァしかいねぇし、真上は空室で両隣も空室だったから
いや、待てよ? これでこんなにも怒ってるってことは? なんだ、嫉妬してんのか。そうかそうか、まだ若ぇからな。そういうのにも嫉妬しちまうかぁ? ククッ、可愛い奴め。
「しゃーねぇな。今日からイヤホンでもすっか」
────
あの日以降、
んで、俺はつくづくタイミングのいい男らしい。帰宅途中であろう
はっはーん、なるほど? 次はそう来たか。
AVに嫉妬する自分の未熟さに気付き、この俺に見合う女になるべく
しかし残念だったな、俺は大人の魅力が溢れる
俺は
「うし、ここんとこ
── 久々に観る
隣に越してきたギャルは、どうやら俺のことが好きらしい。 橘ふみの @fumifumi18
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