第二章 貴方が本気で好き
世界の下
第12話 「好き」
かと言って...俺は三島に復讐させようとか。
三島にアイツらに復讐してもらいたいとか思ってないのだが。
そんな事はあってはならない。
俺は三島と一緒に歩く。
それから曲がり角で三島を見る。
「じゃあ」
「...ね、ねえ。佐沼くん」
「...ん?」
「私の、家に来ない?」
「...な、何で」
「い、一緒に」
「何で...」
俺は赤くなりながら三島を見る。
三島は赤面しながら俺を見ている。
な、何でそんな顔をする。
汗が出ながら俺はごくりと唾を飲みこむ。
「...来てほしい」
三島はそう言いながら複雑そうな顔をする。
俺はその顔にハッとする。
それから首を振ってから「...どうしても来てほしいのか」と尋ねる。
すると三島は「うん」と頷いた。
「...私は...その」
「分かった。もう何も言わなくて良い。...お前の気持ちは...よく分かったから」
「...うん」
「...仕方が無いな。...行くよ」
「あり、ありがとう!」
満面の笑顔で三島は俺に向く。
俺はその顔に心臓がバクンと跳ね上がった。
何だ今の感情は。
「...?...どうしたの?佐沼くん」
「...何でもない」
俺は三島の顔を見ながら「...」となって考える。
何だろうなこの感情。
俺はもうそういうのはこりごりだって思って居た。
そう考えながら俺は三島に付いて行った。
☆
三島の家はマンションだった。
そこで母親と暮らしているらしい。
俺は「...親父さんは?」と聞いたが三島は少しだけ不愉快そうな顔をしてから「居ないよ」と答えたので俺はそれ以上は聞かない事にした。
しかし女子の家、か。
三島の家は初めての経験だな。
「三島」
「うん?何?」
「有難う。俺を呼んでくれて」
「私の...我儘。それに付き合ってくれてありがとう」
笑顔になる三島。
俺はその顔を見ながらドアを開ける三島を見る。
それから三島はドアを開けてからそのまま中に入って行く。
そこには...片付けられたリビング。
本棚や...ソファーがあった。
のびのび出来そうな空間である。
そんなものが置いてあった。
清潔感満載。
「...三島ん家は綺麗好きなんだな」
「うん。お母さんも私も。綺麗が好きなんだ」
「...そうか。それは良い事だと思うぞ」
「...ありがとう。佐沼くん。ささ。座って」
それから俺は促される様に三島に言われて座る。
そして俺は三島を見る。
三島はコーヒーを淹れていた。
俺はその姿を確認してから目の前を見る。
「...テレビも大きいな」
そんな事を言いながら俺は三島の部屋のテレビを見る。
それからボーッとしていると三島がコーヒーを淹れてやって来た。
三島曰くインスタントらしい。
だけど美味しい。
「あの。佐沼くん」
「ああ。どうした」
「...横、良い?」
「...何で横に座るんだよ」
「言ったでしょ。私...は」
「...分かった。座るなら座ってくれ」
それから俺は深刻そうなその顔を促して座らせる。
そしてブラックなコーヒーを2人で飲み合う。
時間だけが音を立てて過ぎていく。
俺は何だかもどかしい気持ちで居ると三島が寄り添って来た。
「お、おい。だからお前」
「...ねえ。...佐沼くん」
「な、何だ」
「...私...今のクラスが好き」
「そう、そうか」
「...でね。...相談に乗ってくれる?」
「ああ」
「私、好きな人が居るの」
三島に好きな人、か。
俺はその言葉にコーヒーカップを置く。
それから「どういう人なんだ?」と聞いてみる。
すると「...でも。やっぱりいいや」と何故か三島は首を振った。
「...言えない」
「...何だよそれ...全く」
「君が好きだって言えない」
「...ああ。俺が好き...は...」
俺はまさかの言葉に固まる。
持っていたスマホを落とした。
三島を見てみる。
そんな三島は「...卑怯者だって思うかも知れないけど。...花園さんに申し訳無いけど。私...ずっと貴方が好きなの」と告白してきた。
嘘だ...嘘だろ。
「三島...それってマジなのか?」
「女の子がこんなに真剣に告白しているんだから嘘じゃないよ」
「...三島...しかし俺は...もう二度と恋はしないって」
「しない、だけでしょ?意識がそう向いているだけ、だよね?」
三島が寄って来る。
それから俺の横に腰掛けた。
そして俺を見上げる。
俺はその姿に桃色の香りで頭がクラクラしてきた。
「...み、三島。あのな。ヤバいって...」
「今日、お母さん遅いんだ」
「そ、それがどうした」
「...佐沼くん」
潤んだ目を向けてくる三島。
俺はその目線にビクッとしながら横を見る。
危うくキスをしそうになった。
今の状況が凄く危ないんだ...が。
これはどうしたものか。
「三島。すまないが俺はそんな気はならない」
「知ってる。だから甘く溶かしてあげる。私が」
「三島...」
「私は誰よりも貴方が好きだって。...教えてあげる」
三島は俺の胸に手を添える。
それから胸の辺りに寄り添ってくる。
そして暫く2人でジッとしていた。
ヤバい。
心臓がヤバいんだが。
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