第11話 不愉快な気持ち
大和先生は肩をすくめて俺達に「早く教室に戻れよ」と右手をぶらぶら振ってから去って行く。
俺はその様子に花園を見る。
花園は「...大和先生...気が付いていたんだね」と言いながら無言になる。
その言葉に俺も「そうだな」と言いながら大和先生が去って行った方角を見ていた。
「戻ろうか」
「そうだな。先ずは一旦戻るか」
そして俺達は飲み物を片手に教室まで戻る。
すると一文字が「どこ行ってたんだ?」と聞いてきた。
俺は花園を見てから「ああ。飲み物を買いにな」と言いながら一文字を見る。
一文字は「ああ。そうだったのか」と話す。
「次の時間は移動教室だったな」
「ああ。そうだったな」
「...ああ。そういや知ってるか?藤宮先生の事」
「...恋をしているって話か」
「そうだな。...良いよな。職場恋愛って」
「よく分からないな。...俺は...浮気されたし」
「...ああ。そうか。すまない」
「いや。良いんだ」
それから教科書を持ってからそのまま「行こうぜ。一文字」と言葉を発した。
すると一文字は「ああ」となってから立ち上がる。
そして俺達は音楽室に移動をした。
そうしてから授業を受ける。
☆
「佐沼くん」
「...?...どうした?三島」
「...昨日はありがとう」
「き、昨日か。いや。良いよ別に」
「でもお礼は言っておこうって思って」
「...そ、そうなんだな」
「う、うん」
音楽室から出ようとした時に三島にそう言われた。
俺は三島を見てみる。
そういやコイツ。
思いながら「お前、髪留め変えたのか」と聞いてみる。
三島は「え。あ、う、うん」と強く頷いた。
「...気付いてくれるんだね」
「そりゃまあな。...よく見ているし」
「...そ、そうなんだ」
三島は赤面する。
それから俺にまた寄り添って来た。
クラスメイト達が「お前らなぁ」と言いながら唖然としている。
いや。俺もしたくてしている訳じゃ無いんだが。
「...み、三島。流石に学校でそれは」
「ねえ。佐沼くん」
「...な、何だ?」
「貴方の元カノさんはもう接触して無いの?貴方に」
「...元カノ...ああ。嫌がらせとか?」
「そう。それ気になっていて」
「...嫌がらせは受けてない。っていうかそんなのあってもバッサリ切り捨てるけど」
「そっか。良かった」
そして俺達は教室に戻る。
三島は何かを察していた様だ。
俺に迫ってくる何らかを。
放課後になってその事件が起こったしな。
☆
「...隼人...」
「...何だお前は。萩原」
「何で?だってここは駅前だし」
「...」
まさかの墨原と一緒かよ。
そう思いながら俺は嘲笑うかの様な墨原を見る。
つくづく苛つくクソ馬鹿どもだ。
そう思いながら俺は横に一緒にたまたま居た三島を見る。
三島は不愉快そうな眼差しをしている。
「...で。新しい彼女を作ったのか?お前」
「そんな訳あるか。テメェに裏切られて心が傷心なんだよ俺は」
「テメェとは凄い言い方だな」
「お前のせいで人生が滅茶苦茶だっての。クソが」
正直...昔は後輩で可愛げがあった。
だが今ではクソッタレな野郎になった。
そうなった落差の気持ちを考えているのかコイツら。
思いながら居ると「貴方がたは...気持ち悪いです」と三島が言う。
「...あ?」
「そして貴方がたは不愉快です」
「...言わせておけばクソみたいな言葉を言うね。君」
「いや。クソはどっちだ。お前だ」
萩原は「もう良いよ。行こう。斗真」と言ってから俺を一瞥して墨原の腕を取る。
それから「じゃあね。隼人」と言ってから悪態を吐く墨原と2人で去って行く。
その不愉快さに呆れが差したのか三島が「もう二度と会わないで下さい」と叫ぶ。
「三島。落ち着け」
「何なの。あの人達。地獄に堕ちれば良いのに」
「そんなもんだよ。...彼女も彼も。...どっちもクソだ」
「...許せない」
「三島。恨むのは分かる。...だがお前は笑顔が似合うよ」
そして俺は三島の頬を触る。
三島は「...佐沼くん...」となる。
俺はその頬を両端で引っ張ってからスマイルにした。
それから俺は「...奴らは勝手に地獄に堕ちるって思ってる」と言う。
そして三島の頭を叩いた。
「帰ろう。三島」
「...佐沼くん」
「ん?何だ」
「...抱き締めても良い?」
「ああ。それ...は?」
俺はその言葉の理解に数秒かかった。
だがその前に三島に抱き着かれていた。
俺は絶句しながら「何を!?」となってから三島を見る。
三島は俺の胸に顔を押し付けてくる。
通行人が「若いわねぇ」とか言っている中で、だ。
「み、三島...」
「私は...萩原も墨原も憎いよ」
「...怒ってくれるんだな」
「当たり前でしょう。...私は貴方が大切なんだから」
その言葉に俺は「...」となって考えてから「へ?」と聞きなおす。
何度も言っているけど大切ってどういう事だよ。
そう思いながら離れた三島に聞く。
「お前な。俺が大切って」
「私の本心だから」
「...しかし好きでもない相手に」
「...本当にそう思ってる?」
え?、と俺は目をパチクリする。
すると三島は人差し指を唇に添えた。
それから「帰ろう。落ち着いた。ありがとう」と言ってくる。
踵を返す三島。
いや待て、本当にそう思ってる?、とは!?
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