第11話 不愉快な気持ち

大和先生は肩をすくめて俺達に「早く教室に戻れよ」と右手をぶらぶら振ってから去って行く。

俺はその様子に花園を見る。

花園は「...大和先生...気が付いていたんだね」と言いながら無言になる。

その言葉に俺も「そうだな」と言いながら大和先生が去って行った方角を見ていた。


「戻ろうか」

「そうだな。先ずは一旦戻るか」


そして俺達は飲み物を片手に教室まで戻る。

すると一文字が「どこ行ってたんだ?」と聞いてきた。

俺は花園を見てから「ああ。飲み物を買いにな」と言いながら一文字を見る。

一文字は「ああ。そうだったのか」と話す。


「次の時間は移動教室だったな」

「ああ。そうだったな」

「...ああ。そういや知ってるか?藤宮先生の事」

「...恋をしているって話か」

「そうだな。...良いよな。職場恋愛って」

「よく分からないな。...俺は...浮気されたし」

「...ああ。そうか。すまない」

「いや。良いんだ」


それから教科書を持ってからそのまま「行こうぜ。一文字」と言葉を発した。

すると一文字は「ああ」となってから立ち上がる。

そして俺達は音楽室に移動をした。

そうしてから授業を受ける。



「佐沼くん」

「...?...どうした?三島」

「...昨日はありがとう」

「き、昨日か。いや。良いよ別に」

「でもお礼は言っておこうって思って」

「...そ、そうなんだな」

「う、うん」


音楽室から出ようとした時に三島にそう言われた。

俺は三島を見てみる。

そういやコイツ。

思いながら「お前、髪留め変えたのか」と聞いてみる。

三島は「え。あ、う、うん」と強く頷いた。


「...気付いてくれるんだね」

「そりゃまあな。...よく見ているし」

「...そ、そうなんだ」


三島は赤面する。

それから俺にまた寄り添って来た。

クラスメイト達が「お前らなぁ」と言いながら唖然としている。

いや。俺もしたくてしている訳じゃ無いんだが。


「...み、三島。流石に学校でそれは」

「ねえ。佐沼くん」

「...な、何だ?」

「貴方の元カノさんはもう接触して無いの?貴方に」

「...元カノ...ああ。嫌がらせとか?」

「そう。それ気になっていて」

「...嫌がらせは受けてない。っていうかそんなのあってもバッサリ切り捨てるけど」

「そっか。良かった」


そして俺達は教室に戻る。

三島は何かを察していた様だ。

俺に迫ってくる何らかを。

放課後になってその事件が起こったしな。



「...隼人...」

「...何だお前は。萩原」

「何で?だってここは駅前だし」

「...」


まさかの墨原と一緒かよ。

そう思いながら俺は嘲笑うかの様な墨原を見る。

つくづく苛つくクソ馬鹿どもだ。

そう思いながら俺は横に一緒にたまたま居た三島を見る。

三島は不愉快そうな眼差しをしている。


「...で。新しい彼女を作ったのか?お前」

「そんな訳あるか。テメェに裏切られて心が傷心なんだよ俺は」

「テメェとは凄い言い方だな」

「お前のせいで人生が滅茶苦茶だっての。クソが」


正直...昔は後輩で可愛げがあった。

だが今ではクソッタレな野郎になった。

そうなった落差の気持ちを考えているのかコイツら。

思いながら居ると「貴方がたは...気持ち悪いです」と三島が言う。


「...あ?」

「そして貴方がたは不愉快です」

「...言わせておけばクソみたいな言葉を言うね。君」

「いや。クソはどっちだ。お前だ」


萩原は「もう良いよ。行こう。斗真」と言ってから俺を一瞥して墨原の腕を取る。

それから「じゃあね。隼人」と言ってから悪態を吐く墨原と2人で去って行く。

その不愉快さに呆れが差したのか三島が「もう二度と会わないで下さい」と叫ぶ。


「三島。落ち着け」

「何なの。あの人達。地獄に堕ちれば良いのに」

「そんなもんだよ。...彼女も彼も。...どっちもクソだ」

「...許せない」

「三島。恨むのは分かる。...だがお前は笑顔が似合うよ」


そして俺は三島の頬を触る。

三島は「...佐沼くん...」となる。

俺はその頬を両端で引っ張ってからスマイルにした。

それから俺は「...奴らは勝手に地獄に堕ちるって思ってる」と言う。

そして三島の頭を叩いた。


「帰ろう。三島」

「...佐沼くん」

「ん?何だ」

「...抱き締めても良い?」

「ああ。それ...は?」


俺はその言葉の理解に数秒かかった。

だがその前に三島に抱き着かれていた。

俺は絶句しながら「何を!?」となってから三島を見る。

三島は俺の胸に顔を押し付けてくる。

通行人が「若いわねぇ」とか言っている中で、だ。


「み、三島...」

「私は...萩原も墨原も憎いよ」

「...怒ってくれるんだな」

「当たり前でしょう。...私は貴方が大切なんだから」


その言葉に俺は「...」となって考えてから「へ?」と聞きなおす。

何度も言っているけど大切ってどういう事だよ。

そう思いながら離れた三島に聞く。


「お前な。俺が大切って」

「私の本心だから」

「...しかし好きでもない相手に」

「...本当にそう思ってる?」


え?、と俺は目をパチクリする。

すると三島は人差し指を唇に添えた。

それから「帰ろう。落ち着いた。ありがとう」と言ってくる。

踵を返す三島。

いや待て、本当にそう思ってる?、とは!?

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