第10話 それぞれの愛のカタチ
☆
私は三島さんがきっと彼の事を好きだと思っていた。
その予想は当たっていた。
私は彼女に対して(ライバル同士だね)と言った。
それから私は翌日になって学校に登校する。
「おはよう」
「...三島さん...おはよう」
「...昨日は...ゴメンね。ありがとう」
「気にしないで。...私こそゴメン。脅す様な...」
「誰だってそうなるよ。普通はね」
「...うん」
そんな会話をしていると一文字くんが「お?何やってんだ?」と後ろから言う。
そこには佐沼くんも居る。
2人で一緒に登校して来たみたいだった。
私達は笑みを浮かべて「秘密」と言う。
「?...いや。秘密ならそれでも良いけど...」
「内緒だよ。佐沼くん」
「そうそう」
そして私達はニコッとしながら2人を見る。
それから私達はそれぞれの椅子に腰掛けてからチャイムの音を聞く。
ホームルームが始まった。
☆
何か分からないが三島と花園が仲良くなっていた。
俺は苦笑しながらその姿を見つつホームルーム後に教科書を捲ってから読む。
そうしていると「佐沼」と声がした。
顔を上げるとそこに大和先生が立っていた。
「どうしたんですか?大和先生」
「すまないがプリントを一緒に運んでくれないか」
「え?良いですけど」
「おう」
その言葉に俺は立ち上がって教科書を仕舞う。
それから大和先生に付いて行き空き教室に入る。
するとそこにプリントの束があった。
俺は「これですか?」と大和先生に聞く。
「...ああ。すまない。俺も運ぶから」
「...はい」
「ああ。報酬もあるからな」
「?...飴っすか?」
「いんや。今日は力仕事だ。倍の報酬で缶コーヒーな」
「はは。...先生らしいです」
「...俺さ。...お前が気に入っているんだ」
大和先生はそう言いながらプリントの束を抱える。
俺は「?」と思いながら大和先生を見る。
大和先生は「生徒はみんな好きだが。お前は特に気に入っている」と言う。
何で俺なんか。
「お前を止められなかった俺を悔やんでいる」
「...それは自殺未遂から、ですか」
「そうだ。...お前がさんざん悩んでいたって事を俺は把握しきれなかった」
「とはいっても個人的な事ですし」
「いや。...それでも自殺に導いたのは良くない事だ」
それから大和先生はプリントの束を持ってから職員室のドアを開ける。
そして大和先生に続いて中に入る。
すると女性教員の藤宮七海先生がプリントの束を受け取ってくれた。
大和先生と同年代の先生だ。
「ありがとうございます。大和先生」
「ああ。気にしなくて良いよ」
「?」
そんな藤宮先生を見て何だか違和感を感じた。
何かといえばこの感覚。
つまり...藤宮先生が大和先生に対する感覚が違う。
何だろう。
「佐沼くんもありがとう」
「いえ?」
「?...どうしたの?」
「い、いえ。何でもないです。...では」
藤宮先生...ってもしや?
そう思いながらも口には出さずそのまま踵を返す。
すると「佐沼。待て」と声がした。
俺は振り返る。
そこに缶コーヒーを持っている大和先生が。
「持って行け。...報酬だ」
「大和先生。あまり気にしなくて良いんですよ?」
「いや。...対価ってのは支払われなくてはならないものだ。...お前は特にな」
「...ありがとうございます」
そして俺は頭を下げてからそのまま缶コーヒーを見る。
ビターな感じがした。
そりゃそうだ。
ブラックだしな。
そう思いながら歩いていると「佐沼くん」と声がした。
「花園」
「用事終わったの?」
「ああ。...お前はどうしたんだ?」
「私?私は...様子見に来た」
「?...誰の?」
「君の、だよ」
俺は「???」と思いながらも言葉に「...そうか」と苦笑する。
それから俺は「...花園。丁度良かった。何か買いに行かないか」と話す。
ブラックコーヒーで舌が参っちまった。
「うん?...じゃあ行こうか」
「ああ。すまないな...あ、そういえばさ」
「ん?」
「女子の感覚で良いんだけど...藤宮七海先生って...」
「うん」
「...恋してる?」
俺はそう聞く。
すると花園は「...あー。それは...確かに。何か恋をしているっぽい感じはするよね。あくまで噂だけど」と唇に手を添える。
そして「うーん」と言う。
あー...これ確定かな。
「でも誰に恋をしているかってのは分からない...」
「多分...大和先生だよ」
「...え?...ぇええええ!!!!?」
驚く花園。
俺は「あくまで推測だけど」と言う。
花園は「...ま、まあ確かに...何だか接し方が違うもんね。...大和先生に対して」と言ってから目を回す。
「...うーぬ」
「...そうだねぇ」
そして俺達は悩みながら階段を降りる。
それから俺達は自販機で飲み物を買ってからそのまま階段に腰掛ける。
「でもそれって本当なのかな」と悩む花園。
俺は「...よく分からんけど。モテそうな感じはある」と言う。
「...そうだね...確かに」
「だろ?」
「...そうだったら凄いね」
そんな会話をしていると「何が凄いって?」と声がした。
それは大和先生だった。
小銭をチャラチャラ鳴らしている。
そして俺達に笑みを浮かべる。
「あ、いえ」
「いえいえ」
「...?...何だお前ら」
そして大和先生はコーヒーを買う。
それから戻ろうとしているその背中に「あの」と花園が声をかける。
「あの。大和先生は...彼女居るんですか?」
「...ん?...ああ。愛の告白か?花園。...俺はお前の愛は受けれんぞ」
「違います。...その」
「だとするなら藤宮先生かな?」
「...な」
俺達は固まる。
それから大和先生は肩をすくめてから柔和になる。
そして「...彼女の告白も受けれないねぇ。もしあっても」と呟く様に言う。
俺は「!」となってから大和先生を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます