第9話 ライバル同士


私はカフェで2人で一緒に勉強をしている。

相手は同じクラスメイトの佐沼隼人くん。

まさか男性と一緒にお勉強をする事になるとは思わなかったけど。

これは...アプローチのチャンスの様な気がする。

5月になると中間試験もあるし今のうちかな。


「三島」

「...へあ!?な、何?」

「いや。ありがとうな。今日は」

「え?な、何が...」

「俺は...結構、複雑な感じだったから。感情が」

「...もしかして...例の」

「俺の元カノの話で沈んでいてな」

「...」


どうして佐沼くんにそんな酷い事が出来るのだろうか。

絶対に見る目が無い。

そう思いながら私は複雑な顔をしていると佐沼くんが「...だからありがとうな」と笑みを浮かべて私を見る。

その姿に私は心臓の鼓動が速くなる。


「...」


やはり私は...きっと。

そう思いながら私は佐沼くんを見る。

丁度...この感情が出始めたのは1年生の後半だ。

保健委員の...職業で2人で一緒になった時。

その優しさに傾いていった。


「三島?」

「へ?あ、何でもないよ」

「...お前何か。今日おかしいぞ?」

「いえ!?わ、私は正常だよ!?」

「正常...ねぇ」

「ほ、本当だもん」


私は...この人と一緒にいつまでも居たいと思っている。

今日だって引き留めてしまった。

困ったものだ、と思いながら私は胸に手を添える。

そして深呼吸をする。


「佐沼くん」

「...ん?」

「私...可愛い?」


ちょっ。何を聞いているのか。

馬鹿じゃないの。

聞きたい事が違う。


そう思いながら言葉を引っ込めようとしたが既に手遅れだった。

佐沼くんは「え?」となってから赤くなって考え込む。

私は慌てながら真っ赤になっていく。


「...それはどういう意味だ?繰り返すなよ。お前は可愛いってカラオケ屋に行く前にも言ったじゃないか」

「い、いや...そう、うん、そうだね。うん」

「...お前は...内面が素敵だが」

「...へぅ!?」


それは予想外の答えだった。

私は心臓がバクバク鳴り始める。

この人...この人は内面を見ているのか?

外見じゃないと?

女子は外見じゃないって言いたいの?

すっごい良い人。


「...って何を言わせるんだよ。お前な」

「...」


私は熱が指にも足先にも集まる。

マズいこれ。

ますます私は脈拍が上がる。


彼を好きになっていっている。

だけど...彼には。

花園さんが居る...から。


「...」

「...そ、そろそろ帰ろうか」


そして私は勉強道具を直す。

それから慌てていると「...なあ。三島」と佐沼くんが言った。

そうしてから「お前は言われんでも可愛いから」と諭す様に言ってくる。


「...自信は持って良いぞ」

「...うん。ありがとう」


私は唾が多くなる感じを感じながら。

緊張しながら。

全身に汗を感じながら。


そのまま立ち上がる。

それから2人で一緒に出る。

既に外は...薄暗くなっていた。


「じゃあこれで」

「...佐沼くん」


そんな佐沼くんを最後に引き寄せる。

それから私は佐沼くんの頬にキスをした。

そして私は唇を離してから佐沼くんを見る。

佐沼くんは絶句していた。


「な、にを?!」

「今日のお礼」

「...馬鹿な!?」

「...今日はありがとうね。佐沼くん。じゃあ帰ろう」


そして私は歩き出す。

それから息を大きく吐く。

大きく吐いて吸い込む。

人生で最も...緊張した気がした。

信じられないぐらいに緊張して...心臓が口から飛び出そう。



一緒の参考書を買ったのは。

彼と一緒のモノを持ちたかったから、だ。

私はニヤニヤしながら参考書を見る。

それから私は胸に押し当てる。


凄く...緊張した。

そう考えているとメッセージが入った。

それは...花園さんだ。


(今日はどうだったの?)


そう書かれている。

私はその事に(うん。すっごく楽しかった)と答える。

それから書いてから送信する。

すると(そっか...)という感じで書いてくる。

私はゴクリと唾を飲みこむ。

そして聞いた。


(ねえ。花園さん)

(うん?何?)

(...貴方は彼が好きなの?佐沼くんが)


その言葉に返事が止まった。

それから1分が経った。

そして文章が送られてくる。

それは(はい)という言葉だった。

私は内心で心臓が冷ややかな手で包まれる感覚だった。


(そ、そうなんだ)

(私は...痴漢から救ってくれた彼が好き)

(...そうなんだね)

(うん。大好きだよ)


私は悲しくなって胸が締め付けられ。

唇を舐める。

それから汗を流してから無言になる。

光だけが私の支えになっていく様な...そんな。


そんな感覚。

それから2分経った。

私は悩んだ末に...考えた文章を刻んだ。


(私も彼が好き)


そういう感じで、だ。

するとスマホが震えた。

私が震えているのかスマホが震えているのか分からなかったけど。

答えは直ぐに出た。

花園さんからメッセージが入った。


(...うん。知ってる)


文章はそう刻まれていた。

ますます暖房が効いている部屋にも関わらず冷たくなっていく。

そういう感覚だった。

だけど花園さんは次にこう書いてきた。


(きっとそうだろうなって思った。...とても素敵な話だね)


まさかの言葉に私は(え?)と書く。

花園さんは(良いんだよ。別に。彼を好きになっても。だけど私、負けないよ)と書いてくる。

私はその言葉に(花園さん...)となる。


(これからは多分...ライバル同士だけど。仲良くしてね。意地悪しないで)


花園さんはそう書いてくる。

それから私に笑みを浮かべる様なグッジョブをしたうさぎのスタンプを送ってくる。

私はそのスタンプに顔を上げる。

そして(...うん)とメッセージを送る。

私の好きなポ〇モンのスタンプも添えた。


そうしてこの日。

私と花園さんは恋愛のライバル同士になり...友達でもあり。

大切な人同士になった。

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