第4話 自殺は最低な死に方だ

カラオケ大会はクラスメイト達の手によって半端じゃない盛り上がり方になった。

デュエットまでやらされて。

俺は苦笑いな感じで音程も合わないまま歌ってから。

みんなでカラオケ屋から出る。

そして空を見上げていると「佐沼」と声がした。


「大和先生?」

「...お前、死のうとしたんだってな」

「...何でそれを知っているんですか?」

「あれだけ噂になってればな。...そしてこの大会の目的がお前を励ます事だったんだな?」

「...そうっすね。...そんな感じです」

「そうか。...佐沼。...お前を必要とする人は必ず居る」


そして大和先生は「自殺はな。...周りの奴らをどん底に叩き落とす最低かつ最低な死に方だ」と言いながら真剣な顔をする。

俺は「!」となってから大和先生を見る。

大和先生は「実はな。俺は同級生を自殺で失っている」と言った。


「...え...」

「そんな死んだ奴の...その後を考えた事はあるか?」

「...いや...無いです」

「そいつの親は子供を失った悲しみに耐えられなくてな。精神を病んじまったしな」

「...どうして自殺したんですか」

「テストで良い点数が取れなかったからだろうけど。結構悩んでいたみたいだ」

「...そうだったんですね」


そう言いながら俺は「...」となってから俯く。

すると大和先生は「俺が...自由気ままで後悔の無い人生を送れって言っているのはそれが原点かもしれない」と言う。

俺は「!」となって顔を上げてから大和先生を見る。


「...じゃないと思春期ってのは猛烈に窮屈だからな」

「...大和先生は教師になった理由って」

「そうだな。...子供を守りたいんだ」

「...」


俺は沈黙する。

そして俺は大和先生を見る。

大和先生は「...彼女さんに...浮気されたんだってな」と言う。

俺は「...はい。...実はそれで死にたくて」と告白した。


「...それはアイツから聞いたよ。一文字からな」

「...そうだったんですね」

「ああ。すまないな。個人的な事を聞いて」

「...いえ」


そうしているとぞくぞくとクラスメイトがカラオケ屋から出て来た。

花園が寄って来る。

「解散しますか?」という感じで、だ。

俺は大和先生を見る。

大和先生は「そうだな。...じゃあ解散すっか」と手を叩いて言った。

するとクラスメイト達は俺に寄って来る。


「死ぬなよ~?」

「そうだそうだ。今回は良い機会だったんじゃねーか」

「そうそう」


俺に対してみんなはそう言ってから解散していく。

その言葉の重みを受けながら俺は花園と大和先生を見る。

一文字と三島もやって来た。

その中で大和先生が言う。


「そいじゃ。まあ気を付けて帰れよお前ら」

「はい。大和先生。ありがとうございます」


そして俺達は大和先生に挨拶をしてからそのまま4人で帰宅する。

そうして歩いて帰宅していると無言だった花園が「みんな。ありがとう」と言い出した。

俺は花園を見る。

花園は俺達に笑顔で居る。


「花園さん?」

「...私、今日...カラオケ屋に行って良かった。本当に」

「...そうだね。ね?佐沼くんは?」

「俺?俺は...そうだな。楽しかった。本当に。お前らのお陰でな」

「うふふ。良かった」


すると一文字は「俺はこっちなんだ」と指差してから俺達に向く。

「ああ。確かそうだったな」と俺は反応した。

一文字は俺らを見てから「じゃあ」と手を挙げてから俺をジッと見る。

何だよ。


「とびきりしごかれてこいよ。花園さんに」

「一文字。お前はアホか?」

「いやいや。冗談じゃねーよ?マジに言ってる。花園さんにしごかれろ」


それから一文字はニヤリとしながら手を振り去って行った。

俺は盛大に溜息を吐きながら三島と花園を見てみる。

三島と花園は俺を見ながら「...私ももう少し行ったらお別れ。...宜しくね」と言う。

俺は三島は少し先に住まいがあるのか?


「三島ってこの辺りに住んでいるのか?」

「うん。そうそう」

「ほーん」

「花園さんと佐沼くんは?」

「俺は一丁目だな」

「そうなんだ。花園さんは?」

「私も一丁目だよ」


マジで?

そう考えながら花園を見る。

花園は俺に対して「凄い偶然だね」と言う。

俺はその言葉に「ああ...確かにな」と答えた。


「偶然にも程があるな」

「あはは。私は嬉しいかも。近所なら色々と...関われる」

「そうだね。羨ましいなぁ」

「羨ましいって何だよ」

「え?!あ、い、いや。何でもない」


三島は黙ってしまう。

何だ?、と思いながら三島を見る。

すると三島は「そ、それはともかく」と言葉を発する。

それから俺達を見る。


「花園さん」

「はい?」

「あ、あまり...彼とイチャイチャは禁止」


それから三島は「じゃ、じゃあね」と言ってから去って行く。

後に残された俺達は顔を見合わせる。

そして「?」を浮かべた。

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