第3話 青春とは犯罪じゃ無ければ好きな事をするべき
花園美幸。
俺が以前、痴漢から救ったとされる美少女。
その時、俺は面倒ごとは御免だな、と思い直ぐに立ち去った。
だが花園美幸は俺を覚えていた。
だからこそ今回、自殺を妨害された。
「はろぅ」
「よお。三島」
「何その軽い返事?美少女様が声をかけて来たんだから」
「まあ確かにな。お前も相当な美少女だよな」
三島瀬奈(みしませな)。
このクラスの女子達のリーダーにも近い。
茶髪に笑顔の絶えないツインテールっぽい髪形。
とは言ってもそれは悪い意味ではない。
三島は面倒見が良い女子。
そういう意味でリーダーなのだ。
そんな三島とは1年生の頃からの知り合いだ。
「...でも良かった」
「?...何がだ?」
「君...死にそうな顔をしていたから」
「...死にそうな顔、か」
「そうそう。まあそれは無いと思うけどさ」
すると横の一文字が「いや。それは嘘だな」と言う。
それから「...コイツ列車に身を投げて自殺しようとしたらしいから」と余計な事を説明してしまった。
「え」と絶句する三島。
クラスメイト達も「待て。どういう事だ。佐沼」と言ってくる。
余計な事になってしまった。
「実は佐沼、浮気されてな」
「...あー。マジか。...それで」
「死にたくなるわそれ。相手の女子にか」
「そうだな」
するとその中で先陣を切って「だからみんなで励ましてあげて」と花園が言う。
オイそんな...火に油を注ぐ様な。
そんな感じで思いながら苦笑いで花園を見る。
クラスメイト達は「よし。んじゃ全員で励ます為にカラオケ行かね?」とか言い出して俺を見た。
「賛成」
「だな。賛成多数だ」
「それは確かに」
オイオイ。
そんな俺に励ましをしなくても良いんだが。
そう思いながら居ると「んじゃ俺も参加して良いか?」と声がした。
その声の方角を見る。
「大和先生!?」
「いやなんの。クラスの様子を見に来たら楽しそうじゃん?」
「大和先生...仕事は」
「これも交流会で仕事だ。早引きすっか」
「んな無茶苦茶な」
「ハハハ。という事でお前ら。仕事終わったら行くから」
「「「「「イエス!」」」」」
全くこのクラスの連中は。
そう思いながら居ると花園が「楽しそうなクラスだね」と笑顔で俺に向く。
俺は「いや。ただ単にカラオケ行きたいだけだろ...」と苦笑い。
だけど内心。
正直...嬉しかった。
こうして励ましてくれる事が、だ。
☆
カラオケ大会が行われ中盤戦になった。
横に腰掛けている三島が「ね。佐沼くん」と聞いてくる。
何だ。
「死にたいって...どうして思ったの?」
「...俺が死ねば...全て終わるって思ったからな」
「そんな事は無いし...相手も調子に乗るんじゃない?」
「だろうな。...最近気が付いたよ。そういうの」
「...良かった」
「花園のお陰だな」
それから俺は苦笑しながら歌っている一文字と花園を見る。
すると三島が俺に寄り添った。
そして「私、貴方が死んだら嫌だから」と言ってくる。
「...ああ。もう無いよ。...俺は花園に生かされた」
「うん」
「...ところでお前。何で俺に寄り添ってんだよ」
「ふふ。何ででしょう?」
「あい?」
俺は良く分からないまま三島を見る。
すると「イチャイチャより歌えコラ」とラップで言われた。
一文字からもう一つのマイクが手渡される。
俺はその事に溜息を吐いてから「俺はイチャイチャしてるんじゃないぞコラ!俺はイライラお前もイチャイチャ!」と即興で下手糞なラップを作って披露した。
クラスメイト達は笑ってから俺達の姿を見ていた。
☆
「うぃーす」
「あ。先生」
カラオケ大会も終盤戦。
マジに先生が来た。
俺は再び苦笑しながら先生を見る。
先生は白衣を脱ぐ。
「いやー。かったるいわ。仕事ってのは」
「いやいや。先生が言う事では無いですよ」
「まあ...そうだけどさ。大人でもぼやきたくなるんだよ」
「そうなんすね」
「そうだ。...あ。佐藤。デ〇モン入れて」
「デジモンっていえばbut○erflyっすか?」
「そうだなぁ」
そして大和先生はマイクを受け取ってから〇utterflyを披露した。
何とも歌声が...凄く。
心地良い歌声だ。
大和先生にこんな特技があるとはな。
「俺の青春だ。...佐沼」
「...え?」
「お前も青春を嗜めよ。少しは」
「...それでわざわざ自分の...その。デ〇モン歌ったんですか?」
「まあな。...俺のルーツだ」
大和先生は「次誰が歌う?」と言ってくる。
すると花園と何故か三島が手を挙げた。
見合う花園と三島。
「...あ。どうぞ」
「いえいえ。花園さんどうぞ」
そして花園は俺を見る。
何だ、と思っていると花園が「佐沼くん。デュエットしよ」と言ってくる...は?
俺は「何で!?」と言ってから花園を見る。
「あ、その。そ、その後に私も良いかな」
「...え!?」
いや待て何でだよ!!!!!、と思い見ると大和先生は「ははは。モテモテだなぁ...」と遠い目をしながら俺を見ていた。
一文字も遠い目をしていた。
クラスメイトの男子達は「クソ。ちっ」と舌打ちをする。
女子達は「きゃーきゃー」言っている。
何故こうなったんだ。
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