第1話 花ハニゃ

「この前さあ」


 腐れ縁の、あこちゃんが教室でマスカラをつけながら言う。


「なによ」


 あたしは、マニキュアを塗りながら聞く。


「のんちーぃのママ、駅前で見たよ」


 そんなことを言うので、


「えー、なんかハズいなー」


 隠したいわ。


「イイじゃん若くて。ぼくのママなんて、40代でぼくを産んで今ヨボってる」


 あたしより、隠したいと言うあこちゃん。


「そ、そうなんだ」


 こっちは、年齢じゃなくて行動なんだよ。


「それでさー」


「えっ?」


「新しい彼女が、出来たんだね?」


 ニヤニヤするあこちゃん。


「えー、まさか」


 また、うちの家の恥部がぁ。


「ちゃんと、このまなこで見届けたも」


 塗り立てのマスカラの目を、指でめちゃくちゃ広げて言うあこちゃん。


「なにそれ。しかし、最近とっかえひっかえなのよ」


 とほほだよ。

 家に次々と知らない人が。


「キタコレ。詳しく」


 興味津々なあこちゃん。


「うん、なにかちょっと気にいらないと、すぐ別れたいって言う女になっちゃって」


 更年期には、まだ早いと思うけれど。


「へぇ、反抗期?」


 悪い笑顔を見せるあこちゃん。


「アハッ、そうかも」


 そうだよ。そうとしか思えない。


「ウケるー」


「やめてよ。身内だから草枯れるわ」


 思わず、ため息が出るあたし。


「まぁまぁ、そんなに落ち込むなし」


 あたしの肩を叩くあこちゃん。


「で、あこちゃんは彼氏とは上手くいってんの?」


 逆に、質問してやるわ。


「ぼくは、自由でいたいんだけど彼氏が、セックスしようとアレコレやってくんの。マジきも」


 口を、歪めるあこちゃん。


「あんた、まだ処女ムーブしてんの。マジでキモい女だね」


 正直に言うと、


「えっ?」


 キョトンとするあこちゃん。


「好きだったらセックスして、好きじゃないなら別れる。別の男を探せばイイだけでしょ」


 ストレートに言うと、


「えー、顔面は気にいってるんだけど、さわられるのがイヤなんだよね」


 めちゃくちゃなことを言うあこちゃん。


「なんで? 好きじゃないの?」


 と、聞くと、


「顔面が好き」


 イヒヒと笑うあこちゃん。


「なにそれ。また処女ムーブしてる」


 ちゃんと、指摘するあたし。


「だってー、処女なんだからしょうがないじゃーん」


 体を、くねらせるあこちゃん。


「彼氏がいるのに処女って、自慢になってないから」


 やたら、自慢話っぽく言うのでつっこむあたし。


「えー、だって男って、そばにいるだけでキモいじゃん」


 苦笑いするあこちゃん。


「なにそれ」


「のんちーぃだって、男と付き合ったことないじゃん」


 と、言ってくるので、


「だって、トキメク男に出会わないから」


 簡単に答えるあたし。


「うーん」


 また、体をくねらせるあこちゃん。


「その代わり、トキメク女にはガブガブいっちゃうけど」


 そこは、ためらい無く。


「のんちーぃの肉食ぶりは、ママ譲りね」


 ものスゴく、イヤミを言うあこちゃん。


「冗談でもヤメて」

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