異端解除師-どんな呪いだろうと病気だろうと解除できる能力者は依頼者とともに旅に出る-
智天斗
第001話 『いばらの呪い』
森の中を歩む人影があった。
「こんな森の奥に本当にいるんだろうか」
2人の男、片方は戦士もう1人は魔法使い。
森の中には魔物が生息しており、村人は絶対に近寄らない。
そんな中でも、2人は帰ろうとはしなかった。
「ルース様、彼女を助けるにはもう〈解除師〉に頼るしかありません。普通の病気や呪いとは違う。あれは〈魔族の呪い〉です」
「そんなことはわかっている。王宮にも〈解除師〉はいるようだが多額の金を積まないとまず動いてくれない。教会では聖典を持つ者でさえ完全に治すことができないと言われたんだぞ。〈いばらの呪い〉はそういう呪いだ」
「はい、ですがこの地。辺境にあるアルバス国のカドノ村の奥には条件を呑むことで、解除師としては低額で仕事を請け負うという者がいるという噂です」
「それはどこの情報なんだ?」
「情報屋です」
信用ができるか否かそれは行ってみなくては分からない。この先に誰もいなければ、確実に俺の幼馴染は助からない。
「オーウェン、一気に抜けるぞ!」
「はい!ルース様!」
2人は剣と魔法を駆使して、何とか道を進んでいた。そして、目の前に大木を見つける。
見下ろしても視界には木しかない。この国に訪れる際に見えていた大木はこの木のようだった。
「これは、また大きい木だ。色んなところ旅してきたが初めて見る」
「これは〈グジャの樹木〉ですよ。伝説の僧侶であるグジャが自分の旅路で植えたとされる樹木です」
「本にも載っている名前だな。こんなところにもあるとはな」
樹木を回るように進む。すると、樹木に扉が取り付けられていることが分かった。
「ここではないのか」
「そうかもしれません。早く行きましょう、夜が近い。魔物が活発になる時間帯です」
2人はすぐに扉を叩いた。
「すみません」
返事は無い。
「この辺りは人がいるはずだ。あれは魔物の立ち入りを防ぐための石が取り付けてあるから」
周りの木々には確かに立ち入りを防ぐための石が取り付けられている。石は青白く光を発している。
「すみません」
もう一度、扉を叩くと一人の男が扉を開いて現れる。
「誰だ、何の用だ」
出て来たのは若い男だった。黒髪で服装はあまり綺麗とは言えない。手には黒の手袋をして、全身黒ずくめだった。第一声からして、とても対応が悪い男に見えた。それに加えて目にクマがついている。
「す、すまない。私はルースというもの。訳あってここを訪れた。解除師を探している」
ルースが理由を告げると男は伝える。
「あなたの探している人なら目の前にいる」
この男が〈解除師〉?
解除師という仕事はとても儲かると聞く。なのになんとも言えない、小汚い格好の男を前にして2人は少し疑いの目を向ける。
「あなたが解除師様ですか?」
「ダレンだ」
「え?」
「俺の名前はダレンだ。客人は久しぶりでね、少し対応が悪かった」
「いえ、かまいません。それよりも私は依頼に来たのです。呪いを解除する依頼を」
「分かった。中に入ってくれ」
そう言って男は先導する。扉の中は広い室内になっていた。木を基調とした、家具が置いてある。タンスや机や椅子が置いてあり、暖炉に火が着いており、室内は外と比べて暖かった。
「暖かい…」
すると、男はこちらを向いて2人に告げる。
「少し待っていてくれ。そこの長椅子にでも座ってな。と思ったが人が来ると思ってなくて客人を迎える準備ができていない。やっぱり少し外に出てくれ」
せっかく入ったはずの室内から追い出され、扉をバタンと閉めらた。2人は夕暮れの中待たされることになった。十数分後にようやく扉が開いた。
「これはお嬢さん…」
次に扉を開いて出迎えてくれたのは少女だった。綺麗な金髪の美少女。透き通るように白い肌に大きな目。人形みたいな可愛さのある少女だった。
少女は先程の男とは違い、綺麗な緑を貴重にした服を着ていた。
「どうぞ、お入りください」
少女の言う通り中に入ると、先程の男の格好はそのままだった。ただ、先程よりは少し元気そうな声で2人に声をかける。
「2人とも、こちらに座ってくれ。フラン、2人にお茶を出してあげなさい」
2人は椅子に座ると先程の女の子が落ち着いた手つきでティーカップをふたりの座る椅子の前の机に置く。
「紅茶でよろしいですか?」
2人はお願いすると言って、紅茶を待つ。ということは無かった。2人は血相を変えて男に向けて話を始める。
「あなたが"解除師"様ということであれば私の幼馴染を助けて貰いたいんだ」
「私からもよろしくお願いします」
2人が頭を下げる。
「なるほど、まずはあなた達の身元を教えてほしい。あとは、俺の自己紹介をさせて欲しい」
男からの問いかけに対して2人は答える。
「改めて、自己紹介。私はルース・グレイロット。戦士をしている、そして私の隣に座っているのが…」
と続けて、老人が話を始める。
「私は魔法使いをしているオーウェンといいます。彼とは旅路で出会いました。それにしてもダレン殿は若いのに落ち着いていらっしゃる」
「ありがとう、ルースとオーウェン。遠いところからわざわざ来てくれて。若い…か、いやなんでもない。褒め言葉として受け取っておくよ」
2人はそれに対して「よろしく」と伝える。すると、男が改まったように自己紹介を始める。
「俺はダレン、君たちの探していた解除師だ。解除師が何か一応説明だけさせてもらうとしよう…」
《
解除師は世界に数人しか存在せず、認めてもらうにはそれ相応の《技術》が必要となる。また、高額で請け負うを行うことが主流となっている。
「というわけで、2人には事情を聞きたい。先程言っていたはずだ、幼馴染が呪われているとな」
「はい…」
と、話を始めるときに女の子が紅茶を入れてくれる。
「ありがとう。この子の名前は?」
すると、ダレンは女の子に手招きをする。
「そうだな、自己紹介だけしておこう。こちらに来て座りなさい」
女の子はてくてくと歩いて、ダレンの隣に座るとハキハキとした声で自己紹介を始める。
「フラン・エレクトリアムです。ダレン様の助手兼弟子兼家政婦兼その他です」
「ご丁寧にありがとう」
引きつったようにダレンを見る2人に対して、ダレンは笑みを浮かべてフランの頭を撫でる。
「フラン、今から2人の話を聞くから一緒に聞きなさい。久しぶりの依頼人ですから」
「いえ、それよりも《エレクトリアム》と言えば…」
と、続けようとすると、ダレンは口元に手を置いて首を横に振る。察した2人は何も言わなかったように話の話題を変えた。
2人は何故ここに来たのかを話し始める。
「単刀直入に言うと、幼馴染が《いばらの呪い》に犯されました。解呪するには"解除師"の方に頼むしかないと思い、来た次第です」
ダレンは頷きながらも《いばらの呪い》という言葉を聞いた瞬間、眉をひそめた。
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