10人目の子供

きいろいの@入院などでお休み中

10人とかくれんぼ

 昔あったお話です…。


 西川小学校に通う小学生4年生のゆうじくんにはたかしくんという親友がいました。たかしくんは2年生の時に引っ越しをしましたが、隣町への引っ越しだったので今でもよく連絡したり自転車で遊びに来てくれたりと活発な子でした。

 夏休みにたかしくんからたかしくんの学校の友達と西川小学校の友達のみんなで遊ぼうと約束をして西川小学校のグラウンドに集まりました。この学校は遊具が多く校庭が広いのでタイヤ飛びで速さを競ったり一本橋ゲームでジャンケンしたりボール遊びで蹴り合ったりと楽しく遊んでいました。


「なあ!かくれんぼしようぜ!」


 たかしくんはまだまだ元気が有り余っている声でみんなで呼びかけました。広い校庭でやるのは楽しそうとみんな賛成しました。


「学校から出るのと学校の中に入るの禁止な!よーし、じゃんけんするぞー!」


 ゆうじくんは自分含めて11人…じゃんけんで簡単に決まるのかなとチョキを出すとみんなグーを出しました。息ぴったりなのかな?と思いながら鬼になったゆうじくんはジャングルジムで10の10倍の100を数える。広い校庭なのだから隠れる側も探す時間が大変なのだから。


 …100を数えて「もーいいかい?」を大声で叫ぶ。いろんなところから「もういいよー」という声が聞こえた。声が大きかったり小さかったりと遠くに隠れてるやつがいるな?とゆうじくんは探し始める。


 1人目は竹馬や一輪車がしまってある倉庫の裏の隙間、2人目は畑の近くにある木の裏の四角…西川小学校の生徒としてある程度何があるか熟知しているのだ。

 そこから3人目…4人目…と順調に見つけ出し9人目のたかしくんは教員用の自転車置き場の屋根に隠れていた。


「くそー上手く隠れていたんだけどなー!」


 悔しがるたかしくんに勝ったぞ!と小さくガッツポーズをするゆうじくん。でも、まだ10人目を見つけていないので終わってない。他に行ってない場所がないか走って探し出す。


 学校の隅々まで探しても見つからない…ゆうじくんは考えた。意外な物の中にいるのではないかと…。それらしい物を探してみて数分、学校の壊れた椅子や機材が積み上がっている場所の近くに焼却炉があった。古びた焼却炉で長年使われていないようだが、もしかしてここに…?真っ黒に汚れてまで入る所なのかと疑問が出てくる。しかし、たかしくんのように本気で勝つつもりのような子だったらあり得なくもない。


 ゆうじくんは焼却炉に近づいた…恐る恐る手を伸ばす…開けるだけなのに何故が冷や汗がながれ始める…そして取っ手に触れようとした瞬間…。


「ゆうじーここにいたのかー!早くこっち来いよー!」


 たかしくんの声が後ろから聞こえ振り向く。


「みんなさっきから待ってるぞー!」


 その言葉を聞きもしかしたら最後の子はもう帰りたくてギブアップしたのかなと思いゆうじくんはみんなのところへ向かった。


 ゆうじくんはみんなと合流した。みんな今まで何してたんだ?という顔をしていた。…ゆうじくんは人数を数えた。自分含めて10人だ。


「ゆうじには見つかったけど、1番隠れるのが上手いのは俺だったってことだ!」


 誇らしげに話すたかしくんにゆうじくんは聞いた。僕たちって何人でかくれんぼしたのかを。


「何人って、10人だろ?なぁ?」


 他の子もそうだと頷く。じゃあじゃんけんした時にいた子は誰だったんだろう…。


「そろそろ俺たち帰らないとかーちゃんが怒るからな。みんなまた遊ぼうぜ!」


 そう言うと西川小学校組は「また遊ぼう!」と元気よく返事をした。ゆうじくんは少し遅れて返事をした。まだあの子のことが気になっていた。



 家に帰った後にゆうじくんはたかしくんに電話をして今回起きたことを話した。


「今日のは俺んとこの友達もいたから単純に数え間違えじゃねーの?あとはゆうじが暑さで疲れてたとかー」


 たかしくんの話にそうかもしれないと思えてきたゆうじくん。その後はお互いの学校であった出来事で盛り上がって母親に怒られるまで電話をした。いつの間にか謎のあの子のことはどうでもよくなりいつも通りお風呂に入ってベッドの上で眠るといういつも通りの日常に戻った。


































「また…見つけてくれなかった…」


 焼却炉の前に子供が1人、寂しげに呟いていた。


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