第2話
「なんか、いっつも育美んちで会ってる二人と学校で会うってすげぇ変な感じ」
入学式、クラスの担任紹介、自己紹介が終わった後の新入生たちの新生活への不安と期待が入り混じった教室の空気の中、私の机の所に来て
晶は女子の中では背がかなり高く、髪は私と同じでショート、顔はかわいいというよりイケメン系という外見をしている。自己紹介の時、クラスの女子何人かがときめいた顔をしていた気がする。
「分かるわ、制服も三人とも違うのが当たり前だったから二人と同じ制服着てるのってすごく新鮮」
一緒にいた優子も晶に同意する。
優子は身長は平均的だが同い年とは思えないくらい凹凸のハッキリした体型をしており、ゆるふわウェーブの髪、顔はちょっとおっとりしたかわいい顔付きをしている。少年誌のグラビアページに掲載されてもおかしくない外見だ。こちらはクラスの男子がちょっとざわついていた気がする。
二人に対して私は身長は学年で下から数えた方が早く、外見は部活の後輩に「先輩ってマジ座敷童子っぽいですよね。もしくは帰り道の八幡宮でよく見るリス」というどう反応していいか分からない評価を貰ったことがあるが、要は縦も横も色々と小さいという事だろう。顔はまぁ、絶望する程のものではないかな、と自分では思っている。
私達は運良く三人とも同じクラスになれた。最高の高校生活スタートだと思う。
「ほんとそうだよね。これから同じクラスで二人と一緒に授業受けるのかぁとか思うと不思議な気分」
学校という空間で二人と一緒にいるのがまず無かったからなぁ。二人とも学校帰りにうちに遊び来てたからお互いの制服は知っていたんだけど。
「あたし達同じ学校になったことなかったからなぁ。他の人と学校でどんな風に接してるとか、そういう今まで見た事ない二人を見るのが楽しみだわ」
「そう言われると何かちょっと恥ずかしいわね。わたしは学校生活あまり目立たないように過ごしてきたからそんなに面白いタイプではないと思うけど。晶は逆にすごい目立ちそうね」
「そうだなぁ、まぁ確かにいつもクラスとか行事で目立つ役やらされてたな」
「そんな感じだよね」
「育美は・・・マイペース貫き通してそうね」
「否定出来ない・・・。一応中学くらいから協調性というのを身につけたつもりではいるけど」
「バスケ部部長だったもんな」
「晶もでしょ」
中学校では私と晶は学校は違えどバスケ部だった。小さい頃からスポーツ万能だった晶とその晶に付き合って外で遊びまくった私達は同世代の女子より運動が出来る方だった。
晶に至っては一年生の頃からレギュラーメンバーとして活躍し、三年生最後の大会ではキャプテンとしてチームを引っ張り、後一歩で全国大会出場という所まで進んだ。
ちなみに、私の学校のチームは地区大会で晶の学校のチームと対戦して負けた。
中学で初めてバスケをしてみて、運動神経の良さを褒められて調子に乗った私は中学3年間をバスケに捧げることを決めて本気で頑張ったのだが県大会には届かなかった。負けて引退が決まった時は本気で泣いた。ボロ泣きだった。
優子も小さい頃から私達に付き合っているので運動ができる。中学の頃は卓球部だったのだが、しれっと個人部門で良い結果を出していた。中学生の頃、うちの家族と晶と優子で箱根の温泉旅館に泊まった時に遊びで卓球をしたが、全員もれなく優子に瞬殺されていた。
「そういえば高校でも二人ともバスケ続けるの?二人が同じチームに入ったらすごく強いチームになるんじゃない?」
「確かに。それはそれで面白そうだけどねぇ。晶はどうなの?」
面白そうではあるけど、中学ではバスケばかりやってて他の趣味に使える時間がかなり減ったから高校でも続けたいかといったら続けたくはない。バスケをやる上で有利な身長が伸びる兆しも無いし…。
「あたしは高校でバスケ続ける気はさっぱりないんだよね。それよりもいっぱいバイトして、いっぱい色んな事したいかな。バイク大丈夫な学校に入学したから行動範囲も増えるだろうし」
「そうなの?ちょっともったいない気もするけど・・・。」
「あたしはバスケが好きで楽しいって気持ちだけでやってただけだからなぁ。高校生で何しようって考えた時、バスケ以外にもやりたいこといっぱいあるなって。県大会で戦った相手とかみんなバスケに真剣で、敵わないなって思ったし。そういう優子は?卓球続けるのか?」
「うーん。わたしも、続けないかなぁ。元々中学始まって最初に出来た友達が一緒に入ろうって誘ってくれたから入った部活だし。やるからには真面目にやらないとって思ってやってただけで」
「そっかぁ。じゃあ何か入りたい部活ないの?」
「そうねぇ、入るなら軽音部かなぁ。育美や育美のお父さんに教えて貰ったギターが一番の趣味だし。あまり知らない人と一緒に演奏したりっていうのはちょっと恥ずかしいけど趣味に関係する部活に入っていようかなって。親戚のお兄ちゃんがこの高校で軽音部だったんだけど、ここの軽音部って結構活動ゆるいらしくて、幽霊部員でも歓迎なんだって。だから在籍するだけしとこうかなとは思ってるわ」
私のお父さんは楽器屋さんに勤めていて、そのおかげで我が家には色んな楽器が転がっている。一人で遊ぶのが好きだった私は小さい頃から家にあるギターとかで遊んでいたのである程度は楽器を弾ける。その流れで私の家に遊びに来る晶と優子にも楽器を渡して一緒に弾いて遊んだりしていた。晶はそこまで熱中しなかったが、優子はギターが気に入って熱心に練習するようになった。
好きになったらのめり込む性格の優子は小学生の頃からずっとギターを続けていて相当上手い。今は教えた私よりもずっと上手になっている。私の家に来ると暇さえあればうちのギターを弾いているし、自分の家では毎晩基礎練習をしているらしい。私は気分屋だからそんな毎日練習出来ない。
優子はおっとりそうな外見に似合わずメタルやハードロック系の音楽を愛聴している一面もあり、中学の頃に小さい頃から貯めたお年玉やお小遣いを使ってその筋のジャンルでよく使われる7弦ギターを購入するという思い切った買い物をしていた。
「いいね。確かに気が楽そう。それじゃあ私も軽音部に入るだけ入っておこうかな。楽器ならある程度出来るし」
「んじゃあたしも軽音部に入るだけ入ろっと。あたしも楽器弾けなくはないし」
そうして三人とも一応軽音楽部に入る事になった。
入部後の軽音部部長の説明は事前に優子から聞いていたようにかなり緩くて、幽霊部員歓迎、スタジオはみんなで譲り合って使う、部室は自主練なりバンドメンバー募集の掲示板として使うなり、ただただボケっとしにきたり、たまり場として使って、冬にある文化祭のステージに出たい人だけ出るのが軽音部の活動になるらしい。
運動部出身の私としては部活ってこんなに緩くて良いんだ…。と衝撃だったけど、世の中にはこんな部活もあるんだな、と勉強になった。
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