基本的な剣術と魔法で最強を目指す

@Basnaza

第1話 「死は終わりではない」


東京、日本のある家


四角い小さな部屋。その中には、1人が寝られる小さなベッドと服が詰まったクローゼットがある。そしてその部屋に、黒い髪と黒い目を持つ20歳の青年が座っていた。彼の名前は君品 来夏(きみしな らいか)。


来夏はコンピューターの画面をじっと見つめている。画面には、26歳くらいの黒髪で白い瞳を持ち、銀色の鎧と赤いマントを身にまとった青年が映し出されている。その青年の前には、巨大なドラゴンが立ちはだかっている。


「まだ俺に挑もうとする奴がいるとはな……」巨大なドラゴンは青年を見つめ、目を細めた。そして呟く。「お前は人間族の英雄、レックス・クラベルか?」


「その通りだ。そしてお前はドラゴンの王、黒龍ライカニックだろう?」青年――レックスが冷静に答えた。


「フフッ、最後の対戦相手が希望の象徴と呼ばれる英雄とはな……」黒龍ライカニックは嬉しそうに笑い、戦闘態勢を整えた。


「他に誰も残っていないからな。」レックスは真剣な表情でそう言いながら、黒い柄の剣を取り出した。


シュッ!


黒龍ライカニックは巨大な火球を吐き出し、それをレックスに向けて放った。


レックスは迫り来る火球を見つめると、剣の柄から白い刃が現れる。そしてその刃を振り上げ、火球の中心を真っ二つに切り裂いた。


シュバッ!


火球は瞬く間に消滅した。


「魔法剣で火球を切り裂くとはな……」黒龍ライカニックは少し驚いた表情を見せた。「希望の象徴が魔法剣術に秀でているとは聞いていたが、ここまでとはな。」


「褒めてくれてありがとう、黒龍さん。」レックスはその言葉を受け入れると、真剣な眼差しで続けた。「さあ、決着をつけようじゃないか。」


「その通りだ。長引かせても無意味だ。」黒龍ライカニックはそう答えると、口に莫大な魔力を溜め始めた。


一方、レックスは魔法剣を自分の目の前に構え、静かに目を閉じた。すると、彼の周囲に赤、青、茶、緑、黄、水色、金、黒の魔力が現れた。そしてその魔力が剣に宿り、剣の刃はそれらの色に輝き始めた。次の瞬間、レックスは黄金の光を放ちながら空中に姿を現した。


「これでもくらえ!希望の象徴よ――ファイナルブラックホール!」黒龍ライカニックは漆黒のエネルギーを放ち、それをレックスに向けて一直線に撃ち出した。


「ここで決着だ!アストラルユニバースストライク!」レックスは魔法剣を振りかざし、黒いエネルギーを切り裂いた。そしてその剣で黒龍ライカニックを頭から胴体まで真っ二つにした。


「見事だ……」黒龍ライカニックは地面に倒れ込み、そのまま息絶えた。


「……終わった、のか。みんな……俺、勝ったよ。」レックスは膝をつき、魔法剣が消えて柄だけが残った。


「どんなエンディングになるんだろう。」来夏は画面を見つめながら呟いた。すると、画面に「おめでとうございます!あなたはこの星の唯一の生存者です。ノーマルエンドを達成しました。」という文字が映し出された。


「このゲーム、本当にバカげてるな。全員死んで俺だけ生き残ったのに、ノーマルエンドだなんて。」来夏は苦笑しながら、これまでの出来事を思い返していた。


彼がプレイしていたのは**「Chronicles of Astravia」(クロニクルズ・オブ・アストラヴィア)**というアクションRPGだ。2026年に発売され、ファンタジーの世界観や20以上のキャラクター、恋愛要素、複数のエンディングが話題を呼び、2029年の現在でも人気を保っている。


来夏はゲーム発売当初からこのゲームをプレイしていた。しかし、3年間も遊び続けたにもかかわらず、まだ「真エンド」や「グッドエンド」を達成したことはない。それはこのゲームのキャラクターが多すぎて、1キャラクターだけでは情報が足りないためだ。


それでも来夏は3年間、ただ1人のキャラクター――レックス・クラベルだけをプレイし続けていた。レックスはゲーム内で最も難しいキャラクターとされており、魔法の中級・上級が一切使えず、基本魔法しか使えないという欠点を持つ。すべての属性魔法が使えるものの、その制約からプレイは非常に困難だ。


来夏がレックスを選び続ける理由は、彼自身とレックスの共通点にある。そして来夏は信じていた。このキャラクターだけで「真エンド」に到達できると。


「今回もノーマルエンドか……ゴホッ!」来夏は血を吐き、床に崩れ落ちた。実は彼は治療法のない病を抱えており、医者から「21歳まで生きられない」と宣告されていたのだ。


「……時間切れ、か。真エンドを見ることはできなかったな……。」そう呟くと、来夏は静かに目を閉じ、そのまま息を引き取った。



---


アストラヴィアの世界、フローリア王国ライテア首都


中規模の部屋に16歳ほどの少年が鏡を見つめている。彼の黒髪と白い瞳は、ゲーム内で操作していたレックス・クラベルそのものだった。


「死んだら、ゲームの世界そのままの場所に転生するとはな……。しかもレックス・クラベルの体で。」



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