第3話 いざ、トレッキング!

03-01:バスとジャージーとあたし

 ──初のトレッキング当日っ!


 ううううぅ……。

 あたし、休日に学校のジャージー着てる……。

 朝から、バスの中で。

 これ意外と精神的メンタルダメージきつい。

 乗客少ないのが、せめてもの救い……。


『次は~浜平はまびら~。浜平~』


 そして知らない町のバス……これも地味に怖い!

 線路を走る電車と違って、道路は無数に枝分かれっ!

 間違って乗ったら、未知の場所へと連れていかれる……。

 おおぉ……まだスマホ持ってない小学生のころ、乗るバス間違えて見知らぬ土地の終点で降りたトラウマが……蘇るううぅ!

 大丈夫……大丈夫よ、あたし。

 乗る前にバスの路線名、三度見で確認したからっ!


『次は~終点~立山たてやま~。終点~立山~』


 ほっ……よかった、停留所の名前ちゃんと合ってる。

 けれど、ずいぶんと坂道上ってきたかな……。

 車窓からは、街並みがかなり下のほうに。

 山と海に囲まれた地方都市。

 高いビルやマンションがそこそこある、そこそこ都会、そこそこ田舎。

 大きめのスポーツ施設、高架線路、ビル屋上の観覧車……。

 思えばこの街、こうして見下ろしてみるの、初めて……だったかも。

 ここが、あたしが高校卒業まで住む街──。

 お父さんの転勤がなければ、だけど。


「……あっ!」


 終点のバス停に、蔭山さん……部長さん……利賀先生っ!

 蔭山さんと部長さんは、お揃いのジャージー姿。

 お揃い……仲間……チーム……。

 ……うん、ジャージーもまんざらじゃないかも。


 ──プシューッ……ピッ!


 引っ越し前の街でも使えてたアプリで乗車賃清算。

 そしてここは、あたしの知らない町、青春の第二幕っ。

 新しい人間関係、大切にしていかなきゃ!


「おはようございますっ! 灯和泉、幾多の坂道を越え、ただいま到着しましたっ!」

「アハハハ……灯さん。トレッキング的には、ここが出発地点ですけれどね……」

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