タヌキvs狐vs通りすがりのただのおっさん
キリン
なかよしの道
昔々ある山に、仲の悪いタヌキと狐がいました。
二匹はどちらがより人間を驚かすことができるかを競いながら、今日も山道を歩く旅人を狙って変身対決を行っていたのです。
「やいタヌキ、今日こそお前をこの山から追い出してやる」
「望むところだ狐、お前なんかたぬき汁にしてやる」
戦う前からいがみ合う二人の前に、一人の男が現れます。
狐はそれを見てすぐに葉っぱを頭に乗せ、木の棒を握りしめ、ドロンと変化してから男の前に立ちふさがります。
「オラァ! 大人しく身ぐるみ剥がれるか殺されてから身ぐるみ剥がれるか、選べぇ!」
狐は山の盗賊に化けました。姿形だけではなく握りしめた木の棒は刀になっており、それはそれは今にも殺しにかかってきそうな形相でした、しかし。
「なんだぁおめぇ、化け狐たぁ珍しいもんだなぁ」
なんと男は驚くどころか、目の前の恐ろしい盗賊を狐だと見抜いたのです。
「こらっ、あんまり悪戯すんなら料理しちまうぞ。しっ、しっ、あっちいけ」
「ち、ちくしょう!」
狐は悔しさのあまり変化を解いてしまい、恥ずかしくて叢に逃げ帰ってしまいました。
「ははは、情けないな狐。よぅし、オイラがあの冴えねぇ男をちびらせてやらぁ」
そう言って狐は葉っぱを頭に乗せ、さらにしめ縄で作った冠に日本の木の枝を差し……その上で大きく太い木の棒を握りしめ、変化して男の前に飛び出しました。
「うぉおおおおおおお! 俺は鬼だぁ! 食っちまうぞぉオオオオオおお!」
なんとなんと、タヌキは巨大な鬼に化けたのです。それはそれは立派な角を生やした恐ろしい形相で、今にも握りしめた大きな金棒で男を潰してしまいそうな勢い……だったのですが。
「今度はタヌキか、この山は妖怪だらけじゃなぁ」
なんと今度も見破られてしまいました。
「う、うそだぁ!」
「嘘もクソもねぇべ。そら、とっとと失せねぇと殺すぞ〜?」
タヌキはあまりの衝撃に元の姿に戻ってしまい、悔しさと驚きのあまり草むらに逃げていってしまいました。
「はっはっは、タヌキも狐も弱っちぃのう。がっはっはっ」
そう言って男は気分良さげに、山の向こう側へと消えていきました。
「……狐」
「……タヌキ」
敗れて自信を失ってしまった二匹は、互いに向き合いました。
「「あいつをギャフンと言わせたいから手伝ってくれ」」
互いに驚き、そして互いに不敵な笑いを見せた二匹は、それからというもの毎日のように互いに互いを鼓舞しあい、競い合い……共通の敵、共通の目標へとたどり着くべく、負けず劣らず良き戦友として末永く切磋琢磨したとかしてなかったとか……?
それ以来その山の通り道では、仲の良い狐とタヌキに化かされることから、”なかよしの道”として人々の間でパワースポットとして有名になった……かもしれませんね。
タヌキvs狐vs通りすがりのただのおっさん キリン @nyu_kirin
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