執筆戦士カケルンジャー!!

雀太郎

知識や技術じゃねえ! 魂で書けっ!

 オレの名はカケル!


 突然だが聞いてほしい。

 今この世界――小説界に危機が訪れている。


 悪の魔王エタラセーと、その配下である筆折団フデオリーズの侵略。


 キミたち『モノカキー』が狙われている。このままでは小説界に未来はない。


 だが安心してくれ!

 キミたちの小説を守るため、オレがエタラセーの野望を打ち破る。


 オレは愛と勇気の使者。


 執筆戦士カケルンジャー!!


――――――――――――――――――――


 小説界。


 あらゆる場所でモノカキー小説を楽しめる、ハッピー空間だ。


 キミの作品は、今日も面白いゼ!


 モノカキー駅で騒ぎが起こる。筆折団フデオリーズの怪人が暴れていた。


「新規登録、ダメ絶対! 執筆経験ゼロの素人なんぞ、お呼びじゃねえんだよ!」


「おい、なにをしている?」


「オレは筆折団、フデヘラーシ! 執筆は玄人がやってこそ意味がある。だから初心者モノカキーを仕分けしてやってんのさ!」


「なんだって!? そんなことは許さないゼ!」


 鉛筆を取り出す。

 腰のベルト型、缶ペンケースに収納した。


「変身ッ!」


 全身に変化が起きる。

 服装が真っ白な強化スーツへ。


「白紙は怖くない! これから描く、無限の可能性!」


 左腕に最新鋭端末。


「さくさくググれよ、億万単語! ストレスフリーのネット辞書!」


 ヘルメットを装着する。


「書くと同時に文章校正! 最新AI搭載モノカキーの相棒!」


 最後にヒーロー特有のポーズをとった。


「執筆戦士カケルンジャー!!」


「執筆戦士だと……? 筆折団の邪魔立てするか!?」


「当たり前だっ! モノカキーたち一人一人が小説うちゅうを支える力なんだ! それを勝手に処理しようなど、言語道断っ!」


「ならば小説うちゅう空間で相手になってやる!」


「望むところだっ! いくぞっ!」




 小説うちゅうが広がる――




 小説うちゅう空間。

 小説論をディベートをする、わからせ空間だ。


 オレの先攻!


「まず理由だ。なぜ仕分けに走った?」


「小説界には作品が溢れすぎてる。より質の高い作品だけを読めるよう、筆折団が直々に振るいに掛けていたのさ!」


「なんと身勝手、極まりない……! 小説はみんなのものだ。すべてのモノカキーに執筆する権利がある」


「バカかぁ! んなもの一つ一つ読んでられるわけないだろ! そんなヒマじゃねーんだよぉおおおっ!」


 フデヘラーシの気力が高まる。接近すると打撃を繰り出した。


「ぐはぁっ!」


 直撃。

 広辞苑並みの強度を誇る、特殊スーツの上からでもダメージを受けた。

 身体が痛い。

 しかし戦わなくては。モノカキーたちの小説うちゅうを守るために。


 フデヘラーシのターンがくる。


「執筆は玄人だけすればいい。彼らの知識や技術だけで小説界は充分……だからよぉ、初心者や低レベルのモノカキーはいらねえんだよ!」


「言いたいことは、それだけか?」


「なにぃ……?」


「お前は重大な思い違いをしている。確かに世の中にはヒット作をだすモノカキーから、埋もれたままのモノカキーもいる」


 しかし、だ。


「誰もが最初から上手かったわけじゃない。最初は誰でも初心者なんだ。そこから年月を経て大成するんだよ。それがなんだ? その芽を摘み取り、既存の作品だけを優遇しようなど……愚の骨頂ぉおおおっ!」


 スーツに力が宿る。

 フデヘラーシに拳の連打を浴びせた。


「がはぁっ! だがしかし……そうであっても、すべてを受け止めていたら確率的にも――」


「うるせぇ、黙れっ!」


「なにぃいいいいいいっ!?」


小説うちゅうは平等! 誰にでも書く権利がある! 読まれる権利がある! この自由な小説うちゅうこそが、小説界の宝だぁああああああっ!」


 スーツがフルパワーに達する。

 異空間から巨大な万年筆を出した。


「万年筆ブレード! だんひつざん!」


「ぎゃぁああああああっ!」


 一刀両断。

 フデヘラーシを倒した。


――――――――――――――――――――


 始めは誰もが初心者!


 上手さなど気にせずトライしてみよう! 小説界はキミの才能を待ってるゼ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

執筆戦士カケルンジャー!! 雀太郎 @jantaro-n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ