第2話 悪魔な彼女は優しくて、笑顔が可愛い。
黒い片翼を持ち、悪魔と蔑まれる、シルフェは――実際に話すようになると、悪魔と呼ばれていることが信じられないほど、優しい女の子だった。
虐げられていても、蔑まれていても、誰を恨むこともない。自分が我慢すれば、それで誰も傷つかないなら、それでいい、と本気で言ってのける女の子だった。
気弱なのも、キツイ言葉には言い返せないほどおとなしいのも、確かだけど。
それでも、彼女の中心には、何か芯のようなものが――信念がある、と感じた。
ある時、シルフェに(聞いて良いか迷ったけれど)――なぜ片翼なのか、と聞いたことがある。
すると彼女は、かなり迷った後で、それでも答えてくれた。
「わたしね、悪魔と、ええっと……人間の血を、半分ずつ受け継いでるの。それで片翼が黒く……あっ、でもね、両親は本当に、仲が良くって……えっと、別にムリヤリだとか、そんなんじゃなくってね……」
何か想像してしまったのか、かっ、と白い顔を紅く染めるのは、可愛らしいけど。
とにかく、と話を進めるべく、彼女は口を開いた。
「お父さんは、もう亡くなっちゃったけど……女手一つでわたしを育ててくれてる、悪魔のお母さんは、悪魔だなんて思えないくらい、優しい人で……わたし、そんなお母さんの娘なんだから、たとえ悪魔だって、人を傷つけるようなこと、したくなくって……だから、そのぅ…………そ、そんな感じ、です」
喋り慣れていない彼女が、たどたどしく、そう結ぶと――僕は、こう答えた。
「それって、すごいことだと思う――自分が虐げられても、不当な扱いを受けても、それを憎みもせず、許して……お母さんのために、優しくあろうとするなんて。うん、そうだ……シルフェさんは、すごいよ――すごく優しい人だ」
「…………!」
その言葉に、更にカッと顔に朱色を上塗りして。
それでも彼女は、こう答えてくれた。
「……ありがとう、ヨシヤくんっ。えへへっ♪」
その日、初めて、知ったこと。
悪魔な彼女は、優しくて―――
笑顔が可愛い、女の子だ。
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