第4話 Tierの壁

すごーい、広―い。


どこがって代何とか演習場のことね。小さなスタジアムみたいだね。


あれから一時間たち模擬戦の準備が完了し私となんとか…剣城さんは防具をつけて対峙している、まあ、IWの前にこんなショボい防具対して役に立たないけどね。


…少し予想外なことがある。なんと観客席が満員なのだ、なんでやねん。


「千歳天城!ここであなたを叩きのめして差し上げます!」


あ、隆二だ、こっちに手を振っている、無視しよ。


「…っ!千歳天城、無視しないでください!」


「あー刀城さん?」


「剣城です!」


「あー、ごめん、ごめん、いやね、なんでそんな怒っているのかなって」


謎に殺意すら向けられているもん。流石におかしいのでは?


「あなた…入学式で英雄様を侮辱していましたよね?」


英雄?侮辱?


「上里様を英雄ではないなどと!言語道断です、撤回を求めます!」


あーなるほど…ふーん。


「断る」


「…いま、なんと?」


英雄、英雄、英雄、十五の子供に自爆攻撃を敷いておいて、英雄扱い。


私は、いや俺は、高校生らしくいろんなこと経験して、大人になりたかった。


学園では入学時点で軍人と同等の扱いをされる。


そして俺を祭り上げ少年兵の士気をあげるために使う、これは…俺の尊厳に対する侮辱だ。


「剣城美里」


「…っ!?名前覚えているではないですか、それより、さっきの」




「あなたを潰す、完膚なきまでに、ね」




私は言い放つと同時に威圧を放つ、さっきまで騒がしかった会場が一瞬で静まり帰る。


「…グッ、な、何を突然、ちょ、調子に乗らないでも、もらいますかっ!?【ダインスレイブ】起動!」


剣城が己のIWを起動する、予想通り、NIWだ。


具現化系のIWで剣身が真っ赤な大剣だ。


「剣城家は代々剣士の家系、ダンジョンが現れる前から存在した妖魔を払いし一族!このダインスレイブはNIWだけどGIWすら殺しえる!いざ尋常に!能力だけの無能がぁあああ!」


最早、言葉遣いは粗暴となり明確な殺意をこちらに向けてくる


とここで、いつの間にかいた先生が


「両者、準備はいいな、では、試合開始」


はぁ…展開が早いって。まあいいか。


…ところでなぜ憑依系GIW【ヘラクレス】が他のGIWより明確に下の評価とされているのかわかるかな?


【ヘラクレス】は五感を含めた身体能力の極限強化、さらに各種耐性。再生能力、ことこれに関しては【ゼウス】にすら匹敵するといわれている。しかし代償として【ヘラクレス】起動中は…武器が一切使えなくなるのだ。【ヘラクレス】に魔法じみた異能はない、使えるのは肉体のみ。


…こう考えればわかる、全裸のヘビー級ボクサーVSアサルトライフルを持った軍人。…どちらが勝つかなんてそれは明白だろう?


「剣城流…」


え、それじゃあ、この試合も負けるかって?


ねぇ、単純に、ヘビー級ボクサーと…鋏を振り回す幼児、戦ったら、どっちが勝つと思う?


私は真っすぐ突撃し、こちらに振りぬかれたダインスレイブを拳で粉砕する。


「…へ?」


困惑した声をあげる剣城の、顔面を殴りつける。


「喧嘩ごっこがしたいだけなら、さっさと、失せろ、戦場から」


剣城は前歯を散らしながら吹き飛んでいき、動かなくなった。 


演習場に沈黙が落ちる。


「…!?誰か救護室へ!」


それからハチの巣をつついたような騒ぎとなった。


「お仕事終わり」


私はそれを無視して演習場を去る。






「訂正しよう」


廊下でばったり会った先生に開口一番そう言われた。


「お前は正しく戦士だ」


「…弱い者いじめをしただけですよ」


私はそう答える。


「いや、刃物は人間に根源的な恐怖を呼び起こさせる、しかもただの刃物ではない、れっきとした、Tier4 IWだ、それを…素手で砕いた」


「…そうですね」


「で、だ。お前には1組に転組する権利ができた」


ふーん


「このままでいいですよ、4組で」


「…どうしてだ」


「さっき先生は無能たちをせめて肉盾にするといっていましたよね?」


「それがどうした」


「先生って、実は齢15の子供を戦場に放り込むこと自体に反対なんじゃないですか?だからあんなきつい態度をとって…真っ当な道に軌道変更させるように仕向けた、そうでしょう」



「ふ、だったらどうした」


あら、あっさり認めた。


「なら私は4組のリーダーとして、無能たちを一介の戦士に育て上げます」


「…なに」


先生がこちらを睨む。


「…お前はてっきり子供を戦場に放り込むことに反発していると思っていたが?」


「まあそうですね」


「だったらなぜだ?」


「簡単です」


そうして私は満面の笑みをしながら言う。


「先生への嫌がらせです!仇には仇で返すのが私の流儀です」


「なるほと、訂正しよう…お前は」




「どうしようもないほどに狂人だ」






???


「へぇー、あれが隆二君の彼女さんかぁ」


「いやちげぇよ、幼馴染…まだな」


「ふーん、にしても強いね、彼女、天城ちゃんだっけ?」


「その点は俺も予想外だった、まさかこんなに強いとは、な」


「あれ、明らかにtier2 GIW持ちとも同等以上に戦えるじゃん、化け物でしょ、ハハハ」


「へ―それは【オーディン】のリーダーでもか」


「そうだね…でも、勝つのは僕だよ」


「そーかよ」


「なんだい?僕の勝ちは揺るがないよ?不満かい?彼女さんが負けるのは?」


「だからまだ…はぁ。いや、なんかな、天城の奴、なにか隠しているような気がするんだよな」


「ふーん、実は【ヘラクレス】じゃなくて【ゼウス】だったり?」


「それはねぇーだろ、まあ、もし戦うことになっても油断するなよ、森羅、あでも、天城にケガさせたら殺すからな」


「なんだいそれは、どうしろと?」


「努力しろ、リーダー」


「無茶を言うねえ、まあいいか、それよりそろそろ、教室に戻ろうか」


「そうだな」

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