22話 『目覚め』

「ここ、は……」


「あ、ようやく目を覚ました……」


「たくっ、テメェ派手に暴れやがって。どうすんだこれ」


「まぁ処罰は免れないですね」


「うげぇ〜!やらかした宝石獣なんて何されるか分かんないッスよ!月渡ちん警察なんでしょ?何とかしてよ〜」


「無茶言わないでください!!!」


「えっと……」


「美麗お姉ちゃんどっか痛いところとかある?」


「え、無い……けど……」


目覚めた遊蓮さんはどうやら記憶が曖昧らしく、不思議そうに周りを見渡していた

どうやら俺たちへの怒りは一旦納まっているようで一安心だ

これでまた暴れられたらシャレにならんからな……

しかしこれから問題になるのは遊蓮さんがどうなるのか

遊蓮さんが気絶してる間に月渡さんが倒れている人たちの安否を確認してくれて、どうやら死んでいる人はいなかったらしい

最悪な事態は避けられたものの、この惨事を生み出したことに変わりはなく、このまま行けば遊蓮さんは警察に捕まることになる

捕まるだけならまだマシで、1番最悪なのは政府に引き取られ戦争の道具にされること

それは嫌だと紫黄さんが月渡さんにどうにかしろと無茶ぶりを始めた

俺もどうにかしたいけど正直月渡さんじゃどうにも出来ないよなぁ……


「美麗!!!」


「店長……?」


「店長!もう大丈夫なんですか!?」


「ああ……なんとかね。それより美麗……」


「……あ、そうだ。うち……」


遊蓮さんさようやく自分が何をしたのか思い出したようで顔を青くして俯く

どうやら俺たちの誤解は解けたようだがこうなると少し気まずい

遊蓮さんは許されない事をやったのは事実だ

それでも俺は遊蓮さんの優しいところを知っているし、あの暴走も店長のことを思ってのことで、甘いのかもしれないけれどあまり責められないで欲しいと思ってしまう

遊蓮さんは可哀想な程に顔を青くして震えていて、あちらが加害者だと分かっていても居た堪れない


「能力を沢山使ったって言ってたけど大丈夫なのか!?どこか気持ち悪いところとかないか!?」


「……えっ。怒って……ないの?」


「そりゃ怒ってるさ!何も出来ず美麗を苦しめた自分自身に!」


「店長……」


「だけど俺はこれだけはハッキリ言わなくちゃいけない。目が覚めた時警察の人から聞いたが、俺が傷だらけになったのは晟くんたちのせいだと勘違いして暴走したと」


「……」


「俺を想ってくれているということは嬉しい。けれどそれで他人を傷つけるのはダメだ」


「うん……うち……」


「だから、一緒に謝ろう。みんなに許して貰えるまで俺も一緒に謝るから」


「うん……!」


そう言って泣きながら遊蓮さんが店長に抱きしめられながら何度も何度も頷いていた

だいぶ酷い目にあったけど、最後は平和的に終わってよかったな

ぶっちゃけ何度も死ぬかと思ったけど……

この光景を見てると、やっぱり遊蓮さんを警察に渡したくない

どうにか出来ないかと焔に話しかける


「なぁ、焔。遊蓮さんを警察に受け渡ししなくてもいい方法ってあるのかな」


「あ?そんなもんあるわけないだろ。あるとしたらこのまま逃げることだけど……」


「本人がそれを望まねぇよなぁ……」


困ったと頭を搔くこと数十秒後


「やっぱり晟くんと月渡に任せて正解だったか」


「!春滝さん!」


「ああ。月渡、御苦労だった。晟くんも本当にありがとう」


「い、いえ!俺は当然のことをしたまでで……」


「"当然のこと"じゃないさ。普通の人間じゃ自分が死ぬかもしれないのに他人のためにここまで頑張れない。だからこれは誇っていいことなんだ」


「……!は、はい!」


「さてと……遊蓮 美麗。君の処遇なんだが……」


「……覚悟は、出来てるよ」


「そうか……」








「遊蓮 美麗。別に君を逮捕しないよ」


「……は?」


「……えぇ!?」


驚き俺たちを他所に春滝さんは面白そうに大口を開けて笑っていた

月渡さんは「やっぱりこうなるか……」と額ひ手を当ててため息をついていた

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