死神候補

S太郎

第1話 俺の日常が壊れた日


「おい、起きろよ。七時十五分だぞ」


枕元の目覚まし時計が喋った瞬間、俺は布団から跳ね上がった。液晶画面に表示されたアラームマークが、今しがた人間のような口調で話した気がした。


「寝ぼけてんのか...」と呟きながら洗面所へ向かうと、冷蔵庫が震えるような低音で言った。


「牛乳あと50mlだぞ。買ってきてくれよ」


「わあっ!?」


跳ね退った勢いで背中が壁にぶつかる。冷蔵庫の表面に浮かんだ水滴が、どう見ても人の顔のように動いている。


この異常事態に頭がフリーズしていると、リビングのテレビが自動的に電源オンになった。ニュースキャスターの声ではなく、機械的な女声が響く。


『警告:対象者 高坂悠人(17)に《万物通話》の能力が発現しました。48時間以内に死神見習いと接触しない場合、自動的に永久発動となります』


「は?死神見習い?能力?そんなの...」


混乱する俺に、スマホが震えながら警告した。


『メール着信:差出人「死神管理局」件名「貴方の人生終了のお知らせ」』


その時、ベランダの窓がバタンと開いた。黒いロングコートを翻しながら、鎌のような形をした傘を手にした少女が飛び込んでくる。


「ごめん遅れた! 高坂悠人くんだね?私は死神見習いの綾。君の人生、今からちょっと削除するから」


「待てえええ! まず説明しろ!」


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