淫らな四季

椿豆腐

乱れる四季

 唇を重ねるごとに、子宮の花が芽吹きの春に向かっていく。

 __疾く、疾く、ドクドクと、毒々しい貴男という春を頂戴。

 舌を挿れられ、柔らかく食まれると、狂い咲く。


「あっ……」


 接吻の音が花から滴る蜜を搔き立て、私の心を濡らしていく。


「もっと」


 ぐちゅり、ぐちゅり、はしたない開花の音。

 溢れ出る蜜を指で貴男は掬って、長く骨ばった手が深みへ沈む。


「いれてええか?」

「ちょうだい」


 囁かれた声に、じれったいほどの劣情で首元に縋る。


「あ……」


 猛々しいのに繊細な貴男の春。

 数々の男の陽具の痕が図太く眠る冬の胎。

 何度も奥を暴かれては、果てて行き。

 嗚呼、待ち焦がれた卵子が蜘蛛の糸のようだった。

 決して忘れさせないで。

 春が去れば、煩わしい私の蝉時雨が哭くだけだから。


「小指を、もらっておくんなんし」

「だめだ、千鶴」

「いや……いや……。わっちをぬしさまのものに」


 冬のような真白の化粧から涙という小花が咲いた。

 春色の頬を呆れた貴男が触れて、撫でてくれる。

 逃がしはしないと臀部に力を入れ、貴男の魔羅を締め付ける。


「ぬしさま、ぬしさま」

「千鶴。止めてくれ、俺には」

 

 先の言葉を唇で奪って、舌を絡める。

 今、私たちは私たちだけのもの。小指で心は交わせなくても、体だけは朝まで繋がっている。


「愛して」


 嗚呼。雪解けは、瞬きの間に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

淫らな四季 椿豆腐 @toufu_love

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ