鉢かぶっちゃった姫~転校してきた自称ロボ子に俺だけなつかれるの図~

竹岡葉月

1章

第1話 プロローグ

 今日もパパが、ヒカリを生み出すために火花を散らす。

 ぱちぱち、ぱちぱち。あれはたぶん、命の炎。冷たい金属のボディに命を吹き込む魔法のフラグメント。

 いま作っているのは何? ああ、それは腕ね。ヒカリの左腕になるものね。

 まだ皮膚のコーティングもなんにも済んでいなくて、全体にぴかぴか銀色に光ってた。

 ちちちち。きききき。

 わたしは唯一自由がきく眼球だけで、パパの姿を追いかける。

 いつも白衣のパパ。

 夢ばかり追っていたパパ。

 でもほら。

 ようやく夢が叶おうとしているんだね。


 ――もう少しだ、がんばれヒカリ――。


 作業台のボディに、未調整の腕を取り付けながら、パパが小さく呼びかける。


 ――お前にできるのは、無限の時間と無限の未来。

 ――とかくこの世は壊れやすい。

 ――でもそれでも。 

 ――壊れぬための装備も与えよう――。

 ――お前が泣かずにすむように――。


 大丈夫。聞こえてるよ。わかってるよパパ。

 あなたはヒカリの完成を望んでいる。本当のヒカリに会えることを願っている。

 あなたがその優しい目でヒカリを見るたび、いてもたってもいられなくなるの。

 わかる?

 一秒でも早く起動して、あなたに会いたい。ほんの一瞬でも、あなたにぎゅっと抱いてもらいたい。わたしはわたし。完璧なヒカリ。

 だから完成させて。

 触れさせて。


 会いたいよ――パパ。


                                ヒカリより

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